教育研究担当教官から
生涯学習機関としての大学
教育学部長
角替 弘志

 イギリスの大学には Extra-mural Department と呼ばれる部門が置かれているのが一般的である。Extra-mural とは、英語の辞書によれば「城壁(都市)外の、学外の」という意味であるから、文字通りに解すれば、大学の塀(壁)の外にある部門ということになるが、長い大学開放の歴史を有するイギリスにおいては、大学の教育を市民に開放するために置かれている部門であり、重要な位置を占めている。もう10年以上前になるが、私が文部省の在外研究員として滞在したリーズ大学にも Department of Adult and Continuing Education (成人教育及び継続教育部)があり、大学構内の成人教育センターの外に、近隣の都市に二つのセンターがあり、20人以上の教員スタッフを擁していた。  成人教育あるいは社会教育というと、わが国では、教養的・趣味的あるいは生活実用的な学習を連想しがちである。生涯学習もそれとの連想で捉えられ、世間的には、生涯学習とは一生学び続けることだから、高齢者の方々が年齢にもめげず学習にいそしむことだと思われていることが多い。そのことは生涯学習のなかでも大切な部分であることは確かである。しかし、それが全てでないことも確かである。
 イギリスでは、成人教育とか継続教育と言った場合に、特に継続教育と言った場合には、教養的・趣味的な学習よりも、資格取得につながる専門的・職業的な学習を意味していることの方が圧倒的に多い。リーズ大学で成人及び継続教育部のゼミに参加したことがあったが、それが教育経営のゼミであったこともあり、その在籍者は全員が30〜40歳代の学校やカレッジの専任あるいは非常勤の教員であった。参加している理由を聞いてみると次のプロモートに備えて資格を取得しておくとのことであった。
 最近のヨーロッパでは生涯学習(Lifelong Learning)という用語が盛んに使われるようになったが、それは雇用ということと密接につながっているようである。即ち、Learn, Earn, Work,が一体のものとして捉えられているようなのである。雇用形態の違いが、成人の学習形態に違いをもたらしていると考えることができるが、わが国でも、リカレント教育の重要性が認識されてきており、大学がそれにどのように貢献できるか、生涯学習教育研究センターに何ができるかを真剣に検討していかなければならない。
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