『きて見て静大』・「やきもの考古学A」の受講者
柴垣勇夫

 平成12年度の秋口に、滝欽二センタ長の発案で、公開講座をもっと開放的な方法で行うための、『飛ぶ教室』と呼ぶ出前講座や、『きて見て静大』という学内での実技的な講座を計画的に実施する事業が、生涯学習教育研究センター運営委員会で承認された。そして、平成13年1月からセンター教官の研究分野を生かした講座を、その糸口として具体化させることとした。講師や施設・教室の使用等を煮詰め、年明け1月下旬から日曜ごと5回の講座を、@陶磁史講義、A古窯跡調査で出土した志戸呂焼陶片の復元と、BC志戸呂焼に使われたものに近い釉薬を使って、初歩のやきものづくりを教育学部の美術教室の応援を得て実施し、D講評と土と釉薬の話で組むこととした。講師には、実技の指導に陶芸家前田正剛氏と美術科教室教務補佐員土田美智子氏、講話を愛知県立芸術大学助教授太田公典氏にお願いし、要項を定め実施した。これには教育学部美術教育の先生方の協力で、教室使用を認めていただいた。募集は、20人で1月9日に募集したところ、3日間で即締め切ってしまうこととなった。受講者の平均年齢は54才で、28才から70才の幅があり男女比は6対14であった。終了後に寄せられた感想には、古陶磁に触れられて良かったことと、土の成分に関する講話が、大変興味深かったといったことが寄せられた。
 今年度は、Aの復元作業には、古代の須恵器に焦点をあて、一昨年調査した藤枝市の助宗古窯の出土品整理を行っていたこともあって、この8世紀の須恵器を復元し、Cに自然釉をかけてやきものの変化を、実際に経験してもらうこととした。陶磁史の変化を取り入れ、技術の発展過程も体験するという、大学ならではの講座を心がけ、その特色を持たせることに意を注いだ。そして、講師には前年の講師陣に加えて、人文学部考古学の篠原和大助教授にも加わっていただくことができた。今年も年明けの1月8日に募集要項を記者発表したところ、翌日の募集記事から3日のうちに、募集人員20名があっという間に埋まってしまった。前回の応募者は、今回は受け付けないこととしたが、三人ほどの昨年の受講者から欠員が出たら是非入れて欲しいとの希望があった。残念ながら希望には答えられなかったが、人気の高さを感じた。(写真1)
 やきもの考古学と名付けた理由は、静岡の窯業史を見直し、資料の保存と特色ある地域文化を浮かび上がらせることが地域とのつながりを広げることになると考えたからに他ならない。前回と対象資料を変えたことで、より考古学に関心を持つ人の応募が高かったようで、受講者のアンケートに古代の須恵器に触れられることへの期待が高かったことがあげられていた。昨年同様、土と日の日程で組んだ4週に5回の講座だったが、受講者は、48才以上の中高年齢層(平均60才)、男女比は、10対10の同比で、陶芸を少し経験した人が数人参加していた。大学の教室での講義や実技が新鮮で楽しいという反響が強い反面、国立の施設の古さにちょっと驚いたという意見も多かった。浜松や豊田町から6名の参加もあり、環境の良さが気に入り、春には櫻を見にまた訪れたいと数名の人が答えていた。
 参加者の年齢のせいもあるが、大学での文化講座や、実技教室、見学を交えた講座を期待する声が多く、少人数構成によるこうした公開講座への期待の高さが感じられる。リフレッシュやリカレント教育への橋渡しに、小事業ながら学内全体に広がることを望みたい。(写真2)

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