吉岡彌生記念館
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一人の人間の人生、その全てを完全に追体験することはあらゆる人間にとって不可能である。しかし「偉大な」と冠される人の業績、あるいはその人の思考の一端に触れることによって、ある人は彼の人の生き方に共鳴し、己の思想、理想を形成していく上で大きな指針とすることがであろうし、またある人はその場ではさほどの感銘を受けないかもしれないが、知ることによって記憶の片隅にひっかかりはする。いつか再び別の場所で彼の名を聞いたとき興味を持つ可能性は全く無関係であった場合より確実に…「人は環境によって作られる」と言う。「偉大な」人物を知ることによって「偉大な」人への可能性は拓かれるのではなかろうか。
吉岡彌生。静岡の生んだ一人の「偉大な」人物の足跡がここにはある。
館内散策
まず館にたどり着いて受ける印象は、新しく綺麗、ということ(1998年11月オープン)。それから緩やかなスロープ。車椅子の人に対する配慮に気づく。
エントランスを抜けるとロビーである。受け付けで入館料200円(小中学生は100円)を払って、パンフレットと入場券を貰い、辺りを見まわすと入り口らしきものが二つ、それに昇り階段がある。どこに最初に入れば良いんだろう、とパンフレットを見ると
1F
□ 看護とケアの展示ゾーン
□ 吉岡彌生記念展示ゾーン
2F
□ レクチャールーム
…に内部は分かれていると書いてある。
とりあえず右手の「看護とケアのゾーン」に入ってみる。中には大きなパネルと数台のコンピュータ、テレビとビデオデッキがある。パネルには現在の看護とケアの実態、資格取得に関する情報が写真や図版入りで判り易く結構なボリュームで示されている。最近話題になっている問題に関する項目などもあって面白い。
コンピュータの方を見るとマウスやキーボードが付いていない。直接画面に触って操作する形式だ。ATMなどでお馴染みの形式で、解り易い。中身は医師免許のとれる大学の紹介など、パネルに書いてあることで気になったことを調べられるようになっているようだ。テレビは一体何の為にあるのかとパンフレットを見ると、どうやら看護婦の仕事の実際を映像で見られるようだ。上映時間は約20分と書いてある。とりあえず先に他を廻ってみることにする。
ホールに戻り、今度は左手の「吉岡彌生記念展示ゾーン」に入ってみる。正面に吉岡彌生の銅像がある。「へー、こんな顔してたんだ。」などと思いつつ左手を見ると彌生の実家、鷲山病院の看板がある。「鷲山病院」はその名のままで現在も存在している病院で、大東町の土方という地区に生まれた人は一度や二度は必ずお世話になったであろう病院だ。…小さい頃は僕も良くお世話になったものだ。しばし皆に優しかった老先生の思い出に浸る。
気を取り直して内部を見まわすと結構な広さで、左側の壁一面を大きなパネルが覆っていて、吉岡彌生の一生を年代を追って眺められるようになっている。文字と写真でべったりと埋めつくされている。
室内は段差で3つのステージに区切ってあるって人生の序盤、中盤、終盤で分けられている。
第1ステージは『志』となっている。大きなモニタと席があり、モニタの横にはボタンがついていて、「押してください」とある。パンフレットを見ると「吉岡彌生の一生を映像で紹介」(約20分)とある。なるほど。
第2ステージは『翔』である。吉岡彌生の直筆の書、彼女の創立した学校の制服などが飾ってある。
第3ステージは『愛』。このステージに入ると突然机の上のラジオがついて雑音交じりのインタビューが流れ出す。吉岡彌生の肉声らしい。…どこかにセンサがついていたようだ。びっくりした。
突き当たりには採光用の窓があり、彼女の含蓄ある言葉が浮き上がるようになっていて、中々しゃれている。そしてまたもやパソコンである。触れてみると彼女に関する彼女に関するモノの写真が並ぶ。タッチすると解説の文章が現れる仕組みになっているようだ。
展示室を出て右手の方を見ると緩やかなスロープがホールから続いていて、第2ステージの辺りに扉がついている。看護の写真も展示されているようだ。
外に出る扉を開けるとやはり緩やかなのぼりのスロープに手すりがある。バリアフリーの考えの浸透を感じる。いや、最近はこれが当然なのであろう。
スロープをのぼった突き当りにはドアと、さらに上に続く坂道とがある。坂道を登ると吉本彌生の生家となっている。残念ながら家の中には入れない。
戻って扉を開けると、中は「レクチャールーム」である。ここは専門の講師を迎えて看護や健康をテーマとした公開講座、セミナーが開催されているとパンフレットに書いてある。とりあえず今日は何もないようだ。写真が壁に掲示され、大型モニタ、ホワイトボード、椅子などが置いてある。ホワイトボードにはセミナーの予定が記入されている。
ホールに戻ってくると、カウンターに本を並べ、販売しているのが目に付く。吉岡彌生に関連の本だけでなく、セミナー等の内容に関する本も販売しているようだ。
…内部はレイアウトが非常にセンスにあふれていて、かつ落ち着いた雰囲気の為、気分良く展示を見ることが出来る。また、ビデオ映像やコンピュータ検索等も充実していて、更に文字情報が豊富なため、隅から隅まで見て回ろうとすると結構な時間楽しめる。
イベント情報
開館一周年記念イベントとして、シンポジウム【健やかに生きる21世紀―介護を中心に―】が開催されます。
[日 程] 1999年11月20日〔土〕 13:30〜16:00
[会 場] 東京女子医科大学看護学部大東キャンパス
[受講料] 無料 ※ただし、事前のお申し込みが必要となります。(お申し込みは9月1日より受付開始。)
また、特別展【人体のしくみと病気の姿】展も併せて開催されます。この特別展は七回に渡って定期的に開催され、テーマは『人体の正常と異常を目で見て学ぶ』となっています。第一回は1周年記念展として「脳」の展示が行われます。
[開催期間] 1999年10月15日〔金〕〜11月28日〔日〕
[ 観覧料 ] 大人400円 小中学生200円(※料金には入館料が含まれています)
7回シリーズチケット 大人100円 小中学生500円
特別展公開講座
[タイトル] 『健やかな脳と病める脳』
[ 会場 ] 東京女子医科大学看護学部大東キャンパス
[受 講 料] 300円(※10月24日に限り、特別展を無料でご覧頂けます。)
吉岡彌生記念館のご案内
☆開館時間
午前十時〜午後四時三十分
☆ 休館日
毎週月曜(祝日、振替休日の場合は開館し、翌日が休館となります)
毎月第4火曜日(年末の休館日と重なる場合、第3火曜日も休館となります)
☆交通案内
□ JR「掛川駅」から静鉄バス「大東町役場」行きで約20分「東京女子医大入口」にて下車、徒歩3分。
□ 東名高速道路「掛川」インターより約15分。
by Akihito Hagiwara
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