学内講演会
「光技術の現状と未来」
−21世紀の産学協同研究への提言−
講師 浜松ホトニクス取締役社長
氏
期日:平成11年2月4日(木) 14:00〜16:00
場所:静岡大学教育学部附属教育実践総合センター
センター長(岡田嚴太郎)
「生涯学習教育研究センター長の岡田でございます。只今からセンター主催の学内講演会を始めさせていただきます。センターでは、大学と地域を結ぶ自主事業をいくつか計画し、実施しておりますが、本日は、産学協同研究の観点から、講演会を開催することといたしました。講師の浜松ホトニクス社長晝馬先生には、私達の為にわざわざほぼ1日、時間を割いてご講演頂くことになりました。お手元の資料にございますように、21世紀を見据えて、光技術の技術革新と、あるいは産学協同研究について、私達にいろんな角度からご提言を頂けるのではないか存じます。
それでは講演に先立ちまして、佐藤学長から一言、ご挨拶をお願い致します。」
佐藤学長
「みなさん、こんにちは。佐藤でございます。開会にあたりまして一言ご挨拶申し上げます。本日の講演会は只今、センター長の岡田先生の方からありましたように、生涯学習教育研究センターの本年度の普及活動の一環として企画し、学内講演会という形で開催をさせて頂くことになったものでございます。生涯学習センターは皆さんもご存じのように、大学が持っている教育研究機能を社会に広く開放し、そして大学での様々な研究成果を社会に還元するといった開かれた大学づくりの為の拠点であります。本学の場合、2年前に設立されまして、これまでセンターを中心に例えば市民向けの公開講座であるとか、あるいはシンポジウムであるとか、あるいは社会教育主事講習といったような様々な活動を行ってきたわけですが、昨年の秋になりまして、幸いに理学部棟の一角にこのセンターが本格的に活動する上で必要なスペースを確保することができました。人的体制も含めまして、いよいよ静岡大学の生涯学習の拠点が確立されたという矢先でございます。
今日お願いしております講演会は、只今もご案内がありましたように、光技術の開発あるいはその事業展開という点で、日本国内はもちろんのこと、世界のステージで活動されて、いわば日本を代表するベンチャービジネスの旗手といったような形で企業展開をしておられます、浜松ホトニクスの晝馬社長にお話を頂くということでございます。晝馬さんは皆さんご承知だと思いますが、本学の工学部の前身であります、浜松工専のご出身でありまして、卒業されてから今の浜松ホトニクスの創業者の1人として加わりになり、今日のように会社を隆盛に導かれた、いわば優れた経営者でいらっしゃいます。このような経営者としての手腕もさることながら、学問の世界にも造詣が深く、そしてただ単に工学部の出身だから工学系の分野だけということではなくって、哲学とか数学といったような文系、あるいは理系の分野に対しても大変ご関心をお持ちなのでございます。私は学長になってから初めて晝馬さんにお会いしてお話しする機会を得ることが出来たわけですが、何回かお目にかかってお話を伺う中で、やはり我々が持っていない大変該博な知識、さらには視野の広さ、そうしてベンチャー企業の経営者というのはこういうセンスを持って、あるいはこういう思考構造を持っているものなのだということを、再三、実感させる、そういう方でございます。
ご出身の関係で、当然のことながら、浜松の工学部キャンパスにはいろんな機会にお出向きになって、講演会とか小さな集まりの会などでお話し頂く機会がこれまでもしばしばあったと聞いておりますが、実は、浜松だけではなくて文系の学部が所在している静岡のキャンパスで、静岡大学の学生、教授、職員の皆さんと是非ともお話をしたいという希望をかねてからお漏らしになっているということを伺いました。ということもありまして、本日こうした形でご講演をお願いすることになったのであります。
今の大学はいろいろな課題を抱えております。そうした中で、開かれた大学、特に地域社会との連携協力、そして産業とか企業との連携協力関係をどう密にしていくかということが、これからの大学の方向として強く求められているのでございます。晝馬さんは、いわば産業界、企業の経営者としての立場で、あるいは日頃技術開発のお仕事をされている立場から、大学に対して様々な注文や、提言といったものも、講演の中で頂けるんじゃないかと考えております。言うまでもなく、光技術というのは21世紀に向けての大変注目される、脚光を浴びている分野だと思います。晝馬さんはただ単に光技術のテクニカルな話だけじゃなく、そういうものを通観するフィロソフィー、あるいは新しい価値観といったものに立脚して、光技術の新しい世紀での利用価値を含めた人類の未来について、お立場にたったお話が頂けると思います。静岡キャンパスで日頃生活しております私共にとっては、またとない貴重な機会だと考えております。是非最後までご静聴頂きたいと思います。今日は、学長も結構忙しいのですけれども、それ以上に超多忙な晝馬さんに、ほぼ1日、こういう形で時間をつくって頂きましたこと、改めて御礼を申し上げたいと思います。
それでは晝馬さんの話をお聞き頂きたいと思います。また一方的に晝馬さんのお話を伺うということだけではなくて、若干の時間を割いて質問とか、討論で、皆さんの方からのご発言も頂いて、この講演会が成功裡に終わるということを期待しております。本日はどうも有り難うございました。(拍手)」
センター長
「それでは晝馬先生のご講演に先立ちまして、先生のご略歴をご紹介致したいと存じます。先生は大正の末の末、大正15年9月20日のお生まれで、昭和22年3月に本学工学部の前身の、浜松工業専門学校をご卒業になりました。昭和28年9月に浜松テレビ株式会社設立と同時に取締役に就任され、53年10月浜松テレビ株式会社の代表取締役社長に就任され、現在に至っております。なお、浜松テレビは58年4月に現在の浜松ホトニクス株式会社と社名を変更されております。平成に入りまして、平成2年10月には浜松商工会議所の副会頭に就任され、更に平成3年には静岡県科学技術振興財団の理事に就任され現在に至っておられます。平成5年には光科学技術研究振興財団理事長に就任され、これも現在まで理事長をされていらっしゃいます。更に平成5年に人間生活工学研究センターの理事に就任され現在に至っております。また、教育活動と致しまして平成6年1月には、中国の浙江大学の教授に就任され今日に至り、更に平成6年2月には天文学推進財団理事に就任され現在に至っておられます。平成6年3月には分子バイオホトニクス社長に就任され、平成8年4月には科学技術会議専門委員に就任され、更に平成8年12月には磐田にあります、磐田グランドホテルの代表取締役会長に就任されておられます。10年8月には中国南海大学客員教授に就任され、10年11月には宇宙開発委員会専門委員に就任され、いずれも現在に至っておられます。
その他、数々の役職を歴任されておられます。大変ご多忙な先生ですが、本日は私どものために本当に1日割いておいでを頂いたということで感謝を申し上げます。晝馬社長は本学の教育学部付属の浜松小学校をご卒業になって、更に工学部の前身である、浜松工業専門学校を卒業されているということで、本学とは大変深い関わりを持たれておられ、私達にとっても大先輩であるというふうに感じております。またこの講演におきましては、資料にもありますように21世紀を見据えた光技術の革新、あるいは産学共同研究への新しい提言等、晝馬社長ならではの興味深いお話がいただけるのではないかと大変楽しみでございます。それでは晝馬社長、宜しくお願い致します。」
晝馬先生
「こんにちは。仲人口というのは大体良いことを言うものですけど、まあ聞いていてちょっとくすぐったくなりました。実は頼まれてここへ来たわけじゃなくて、私が話させてくれということで押し掛けてきたわけでございます。したがって最後までご静聴をと学長がおっしゃってましたけどつまらんなあと思ったらいつでも退席していただいて構いません。ただここに書いてございますのは、21世紀の産学協同、まあ産学協同という言葉が私はあんまり好きじゃないんですが、要するにそういう新しいサイエンスをつくっていくということ、あるいは科学をつくっていくということを地方でやれといいたいのです。たまたま私共、光というものを、高柳健次郎とここで申し上げれば皆さんご存じですよね。高柳健次郎を知らなくて静岡大学にいるのかということになるのですが(笑)、その流れを汲んでおるということでございまして、それをもとに話をしようと思います。私の書いたものを皆さんにお分けしているというのをさっき聞きまして、それ知っていれば資料をこんなにたくさん持って来るんじゃなかったと思っています(笑)。書いてあることが大部分私の話のネタでございますが、それをただ、読んで頂いたら分かるかどうかというのは問題がございます。
今の日本の姿というのは概ね、明治維新がひとつの出発点じゃないかと私は思います。大勢の人は終戦から出発しているといいますけれども、私は大正生まれでございますので、明治維新が出発点だと思うのです。じゃあ明治維新というのが何だったのかというと、まわりの先進国の文化、文明が非常に進んでいるので、それで驚いて鎖国をしているわけにはいかん、というんで開国したというのが本当のところだろうと僕は思うわけです。ですから明治維新でやったことは、外国の開いたものを持ってこようということに国内挙げて努力したわけです。ですから教育についてもその為に便利な教育をどうするか、ということでおそらく教育制度ができたんだろうと思います。研究というのも外国の進んだ技術あるいは文化をどうやって吸収するか、ということが研究の目的だった。そういうふうに考えてみますと、今、日本の現在のかたちというのはそれを相当引っ張っていると思います。
その証拠にですね、これも資料の中に静岡新聞の記事が入っているはずですから、余分なことを申し上げる必要も無いかもしれませんけど、サイエンスと科学、この違いが霞ヶ関の官庁に行って一生懸命にお役人に話をしましても、あるいは科学技術庁のお役人と喧嘩しましても全然歯がたたんですね。「あんた、そんなこと言ったって、サイエンスっていう言葉が科学だと思えばいいじゃないか。」という話で終わってしまう(笑)。まあ敵の意識はそこしかない。サイエンスというのは何かというのは、その新聞の記事に書いてございますけれども、要するに本当のことは何だと、絶対真理というか、何という言葉がいいのか判りませんけれども、ものごとの真理は一体なんだっていうのを追い求める心がサイエンスの心だというのです。それを追っかけるのに、哲学や芸術や宗教みたいに、自分がこう思うんだということで満足しちゃ駄目なんです。他の人にも、「確かにそうだ。」っていうように納得せしめる手段でもってやるのがサイエンスだというんです。じゃあ他の人が納得するのは何かっていうと、それが数学だとか論理学だとか言うんですね。そして、本当に数学が正しいのかということを考えていくのが、数学の先生ということになるのです。そういうようなことをやっていろんなことの知識が出てくる。その知識を科目別にまとめたのが科学だというわけです。だから日本の側から見ると、使って便利なことは科学だというのでそれを使い出したということで、肝心かなめの、本当のものは何だっていう話はされなかった。特に戦後なんぞはそういうことはさらにしないようになってしまった。明治以来のシステムはそういうことの探求がほとんど無かったために、今、大きな報いが来ているのです。ですから、皆さんG7の会議で、日本の首相が他の外国の首相と一緒に歩いているのが新聞によく出ますね、テレビでも。大体日本の首相というのは隅っこにいるか、歩いているのもみんなからぽつんと離れている。日本の首相の周りに集まってくるのは、景気がいい時には、日本の金を欲しい連中が2、3人周りに来てお世辞を言っています(笑)。金の入りが無い時には誰も相手にしてくれない。というのは、言葉の問題というのがひとつあるとは思うのですが、言葉のみならず、日本から何も聞くことはないですよと。連中の仕事は、金よこせということだけなんですね。非常に情けないと思うのですが……。それは何故かというとサイエンスの心というもの、あるいは日本の首相が他の首相に対して「お前なあ、本当に大事なことは、本当の真理というのは、こういうことなんだよ。だから俺達日本はこういう政治をするんだ、お前達にこうせいというんだ。」というふうなことをちっとも言えない。「金だけ出すぜ。」ってことになってしまうんですね。
それが大正13年の高柳健次郎さんの場合は、このところが違うんですね。何遍も言う話ですけれども、当時世界中にテレビがあったわけじゃない。あるいはどこかに文献があって、そいつをそうっと持ってきて、日本語に直してその通りにやったらテレビが映るよっていうことでもない。だから全く無から始めるようなことを、もちろんそういうことを研究している人は、今から調べればいくらもあったようですが、しかしながら全電子式のテレビを作ろう、と思ってやったのはこの人がおそらく初めてだった。高柳先生が浜松高等工業が出来たばかりの頃に入ってきたところ、校長が、関口さんという校長がいたわけですが、「お前、何のためにこんな学校に来たんや。」と言うので、浜松出身の人間だからというんでもないんでしょうけど、ともかく無線遠視、要するにテレビを研究したいといったのですね。だから高柳さんが後年言ってたんですけど、俺が偉いんじゃない。実は関口さんが、学校を始める時というのは何処でも余分な予算が少し来るんですね。それが3千円ほど残っていると。「3千円で良ければお前持って行け。」と言ってくれたというんで、研究が進展したんです。
高柳記念館というのが工学部にあると思うんですが、その横に高柳さんの胸像がある。高柳さんはそれを見て、「俺の胸像だけあそこに置くなよ。関口さんがいたからこそ、テレビが浜松で出来たんだ。」というので、関口さんの胸像を自分の金で作って横へ置いたという話を聞いたんですが、私はまだ見ておりませんので何とも言えませんが(笑)。
そういうことでテレビというのは一体なんだって言うと、テレビ、いわゆる光、画面は光の分布なんですね。光の濃淡が固まって2次元に分布しているわけです。その情報を電気の情報に変えて、電子にその情報をうつして、それを電波に乗せて送って、もういっぺん光に戻すというのがテレビですね、テレビを技術的に見た解釈です。ですから高柳さんは光電変換技術、これをやったのです。私共の会社は先代の社長、初代の社長が高柳先生の助手をしておりまして、もっぱらここのところをやらされたものですから、多少そういうことの技術を持っていた。この技術をもとに戦後、浜松テレビというものを作って、いろいろやり、現在に至ったというのが会社のざっとした歴史です。
ですから私が言いたいことは、分からんこと、出来ないことをやるんですから、分かること、出来ることだけやっていたって誰も威張れはせんぞということです。日本では、それが外国からものを持ってくるという話で始まっちゃたもんですから、すべてのものが外国にあるよという発想におそらくなったと思うんですね。だから人類が知らないこと、出来ないことがあるなんて話をしても、嘘つけ、それは何だってわけですよ。人類が知らんこと、出来ないことがあるって言ってて、それが何だって言われて返事が出来るくらいならお前に頼まんとこういうわけなんですが、そこのところがなかなか分かってもらえないんですね(笑)。ところで、後先になりますが、高柳先生は、89歳の時に文化勲章(82歳)から勲一等瑞宝章、まあ要するに貧農の息子としては、もらえるだけの褒美を全部もらっちゃったわけですね(笑)。彼が一番喜んだのは、この文化勲章を貰う前に文化功労賞というのを貰いました。それでお祝いに行ったらうんと嬉しそうな顔をして、「君々、文化功労賞っていうのはね、金がついてんだぜ。」って(笑)。それで文化勲章を貰ったときにまたお祝いに行ったら、んーってがっかりしたような顔をして、「君、文化勲章には金はついていないのさ。」と言って。皆さん、お取りになるなら文化功労賞をお取りになった方が(笑)。私も文化功労賞なら貰いたいと思っております。
これも有名な話なのですが、何故高柳さんがそんなテレビみたいなものを、ラジオ放送が来年から始まるという時にやりたいと思ったのかというのは、高柳先生の恩師で中村先生という、蔵前工高が後に東京工業大学になった時の初代の学長になった、その人がいつも学生にこんな話をした。西洋にフォーチュンという神様がいる。幸運の女神で、美人で前髪がふさふさしていて、とてもきれいに見えているが、実は後ろがハゲているのだ。だから、後ろから追いかけて幸せをつかもうとしても、頭がすべってしまってつかまえられやしない。だから、彼女をつかまえるには、先回りして来るのを待って、前髪をつかまえなくてはならない。この話をする時にですね、今日は若い方が半分ぐらいお見えでございますけど、若い人にこの話をするとそれは当たり前だな、人の真似をしちゃ駄目だよ、なんで感心するんだと思われるに違いない。私も最初はそう思ったんですよ。で、だんだん年を取ってきてそろそろ棺桶が近づいてくるという歳になってきますとですね、判ってくる。この、神様というのはなんやね、そんなものは分かりゃせんと。それはいつどこへ現れるんだ、現れるとしたってどんな顔つきをしているんだ、分かりゃせんじゃないか。その前髪を掴むということは、来る奴来る奴を片っ端から掴めば、掴んだ奴の1人ぐらいは俺は神様だと怒鳴るかもしれんという、そういうことしかないではないかと思うんです。どうやって神様を掴むんだ、そこのところがこれから誰も知らん事をやろうとする人間にとって大事なところで、世界の中でこんな事が出来るのは俺だけだぞ、こんなことを知っているのは俺だけだぞということをやろうとしたら、何とかしてこんな事でどうだっていうのを見つけにゃしょうがないじゃないか。というところから、光という仕事でいろんなところとお付き合いをしているうちに、こんな事と違うかという事を感じるようになったのです。これが、実は今日一番皆様に申し上げたいことの基本でございます。それが最後までうまく行くかどうかは皆さんにかかっているのです。しゃべるというのは、私がしゃべってると皆さんお考えなんでしょうけれど、実はそうではなくて、皆さんが私を一生懸命エンカレッジしているか腹の中でけなしているか、まあ何でもいいんですけれども(笑)、そういうような対話があって、それで初めて私が何かものを言いたくなるわけです。同じOHPを持って来ましても、一昨日、大阪大学の工学部の学生さんにお話ししたんですが、大体同じ絵を持っていって話したんですよ。今日は真ん前にいる、佐藤学長がいますが、誠にやっかいなんですけど(笑)。その時の話と今日は大分違うだろうと思います。もう少し出方が違っていると思うんですね。関口さんが何で高柳さんにそんな野放図もないことやらせたんだろう。もし彼が東京大学に入っていって、「俺、テレビの研究したいから。」と言ったら言下に断られて追い出されたんだと思うんですね。「そんなものお前、世界中のどこでやっているんだ。誰もやっていないようなことをここでやってお前が出来るわけがないじゃないか。」ということになる。ところが関口さんは、自由啓発というのを校訓に選んだ。これが大事だよ、と言って一生懸命だった。どういうふうなセリフで皆に教育したのかちょっと記憶にないんですが、ともかく私が学生に入る時も、自由啓発というのは学校の中にそこら中に書いてあった。確かに誰も知らんということを、お前見つけろよという場合に一番大事なのは、本人がその気で大真面目にそれを追っかける気があること、それは各々の自由だよということですね。それを学長が「お前なあ、研究するならこれ研究せい。」といったのではいかんわけです。それでは人類の未知未踏のものを見つけるわけにはいかんのです。啓発ってのは広めて発信しろという意味だろうと思うんですが、自分で勉強しなければだめなんです。だから自由っていう話が非常に大事なことだなという気がするんですが、今は自由じゃなくて民主の方がいいって言うんです、どうも癪に障るのですが(笑)。まあ、あんまり選挙運動はするつもりはありませんが(笑)。
さて、そういうことから、光というものをはかるということで私共の仕事は始まるわけですが、光というのは実は非常に大事なものだということに気がついた。もうさっき学長も光が大事だと言われちゃったから、静岡大学の学長は偉いなと思っているわけですが(笑)、皆さん、光というのは一体何処に住んでるんだと思いますか。出てくるのは確かにランプからも出てくるし、太陽からも出てくるし、あるいは炎からも出てくる。いろいろ出るものは他にもありますけど、だけどそれは出てきた話で、その現住所というか本籍っていうのは何処でしょう。これ、理学部の先生もお見えになっているので、あんまり言ってもしょうがないかもしれませんけど、文化系の先生がお見えになっているので話します。これが実は得意なところなんですが(笑)。旧約聖書の創世記にですね、一番最初に天地創造というのがありまして、神様が天地をつくった。ところがどろどろだった。神様は困っちゃってこんなものをつくった覚えはないと言って、気がついたら「光を忘れた。」とこういうわけですね。それで「光あれよ」と、「光あれ」と言った。それで光をこしらえた。それから夜と昼を分けたんですね。それから天と地を分けて、それで1週間というか6日間かかって全てのものをつくったというのが創世記に書いてあります。これは大体3千年ぐらい前に出来たもので、詠み人知らずだそうです、誰が書いたものか分かっていない。ですけどそれをずーっと後まで人類はこれを非常に不便な思いをして、竹だとか皮ですか、そういうものに筆記をしながら代々写してきました。まあ最近は印刷機をまわせばいくらでもできますから、いくらでも本ができますが。ベストセラーと言いますかベストメーカーと言うんですかね、こしらえた本で一番多いのは、やっぱり旧約聖書と新約聖書なんですね。そんな中で一番読まれないのがまた、旧約聖書と新約聖書(笑)という話ですけど、私はちょっとは読んでますから私以外の人だと思うんですが。そういうことでこれは何を意味するかというと、光がやっぱりものをつくったんだというんです。ものの糊だと。光がなかったらものの形はないよ、だからここに私が存在してるというのは、私の体は良く知りませんけど、炭素だ、酸素だ、窒素だ、何だとか、そういうもので出来ているわけですけれども、そういう物質をここへ持ってきて試験管の中へ入れて並べたってものはできません。何故かっていうとその中に光がいっぱい潜り込んでいて、その働きではじめてものが出来上がる。皆さんもそうだし、この机もそうだし、みんなそうだと思うんですね。ですから光というのはものの糊だということを、ちゃーんと3千年前に、物理もなければ化学もなかった時分に言った人がいて、その言ったことをこれは大事だと言って、ずーっと人類に伝えてきたんです。そういう能力を人間というのは持っているんです。それを物理も知らんくせにあいつ偉そうなこと言うなというのが理学部の先生の得意なとこですけど(笑)、必ずしもそうではないんじゃないかと思います(笑)。どうも気に障ることがあったら申し訳ないと思いますけど、本心で申しておりますので(笑)。
それで今の理屈から言うとどうなるかっていうのは、これも私の全くの素人向きの話で恐縮ですが、原子が、これ水素原子の模型のつもりですが、原子核があってここに陽子が一個あってプラスの電荷がある。これが周囲に電子が存在すると、存在確率と言えっていえばそうなんですが、マイナスの電荷を帯びてて陽子がプラスだと、プラスとマイナスがあれば当然、くっついちゃっていいんじゃないかと、くっついて放電しちゃっていいはずじゃないかと思われるでしょう。それが何で電子が外側で頑張ってんだというのはですね、これがもうひとつの光、あの光子、一個のフォトンがこの電子の中に潜り込みますと、ちょっと元気になってより外側の軌道に移ります。外側の軌道に移ったのがなんかの拍子に光を出しますと中の軌道に移るということで、光というのは電子の中に潜り込んでいて、電子のエネルギーを、また他の意味で言いますと軌道の制御をしているんです。それで原子が集まって分子を構成するという時には、いろんな形の移り方があるそうですから、ひとつひとつは私は分かりませんけど、この電子の状態が例えば共有結合なんて話になりますと、2個の原子が、原子核がその電子を共有してしまうことによってこれがくっつくというようなことがあります。したがってものがくっつくというのは、この電子のエネルギー状態が適当なところになると2つくっつくわけです。例えば酸素と水素を試験管に入れて、適当な割合で入れておいて混ぜると水になるかというと、そのままでは水にならない。それでマッチの火か何かを側に近づけてやってピョンと音がしますと、そうするとかすかに器壁に水蒸気がつくんですね。マッチの火でピョンとやったというのは何かというと電子を適当な状態になるように持っていったということだと私は思っております。ですから3千年たってみて、ちゃんと物理の方から光というのはものの糊だというのが、今頃になってなるほどそうかということになってくるんです。3千年前の人は別に物理なんか知らないのにちゃんと言っていたのです。こういうところが不思議ではないかというふうに思うわけですけど。
ところで今日は文科系の学生さんもお見えなんですか。いますか。そういう人がいると好きなんですよ(笑)。光と言いますと、皆さんは目で見える光のことしかお考えにならない方が多いんじゃないかと思います。しかし、私が今からお話申し上げます光というのはX線、ガンマー線、紫外線、それから赤外線、それから遠赤外の次は電波だと、こういうふうなところがありまして、ここら全部を含めて光と申します。ですからこのビジブルなところだけ話をしているわけではございませんということを覚えて頂く、まあ後の方は私共の商売ものですからどうってことありませんけど。それじゃあその光で一体何が出来るか。光の性質ということを少しお話申し上げて、それで光でこういうことができるという話をさせて頂いてそこから先、一体これから今後どうすべきであろうか、可能性について話そうと思います。可能性が非常にあるということはどういうことかというと、分からんことだらけだということをご説明するわけでございますから、さっきの話分からんけどお前もっとはっきり言えっていう質問は断ります(笑)。分からんということを説明しているわけですから、分からんと思って頂いたらこれで満点だというわけです(笑)。その辺誤解なきようお願いしたいと思います。
これから光の性質について話します。光の本質ではありません。光の本質は何かといわれると、これは、理学部の先生に伺いますと面倒くさい数式を一杯書いてくれてこれがお前光だよって言う。それを分からんというと分からんのはお前が悪いんだといって話は終わりますから、それが好きな人はそっちへ行かれたらいいと思うんですが、私はそういうふうなのは私の五感にピンと来ない。さっきの話のように、光が電子の中に潜り込むよと言うけど、どんなようなことをして潜り込むかと言う話がですね、なんかピンと来ない。数式では分かっているというのが理学部の先生でございますけど。そこで光の性質というのは何かっていうと、粒の性質を持ってて波の性質を持っている。これも非常に有名な話でございますから、今更ということもありますが、どう考えたって粒で波という話はですね、納得のあんまりいかん話ですよね。波というのは何だというのが教科書によくありますけど、池の中に石をぼーんと放り込む。そうすると波がこう、出てくる、あれが波だという。あれは水が揺れてるんであってですね、あそこから波だけ持ってこいといったらどうやって持って来るんだと。そういうこと言うからお前偉くならんといわれるんですけど(笑)。それで、この粒であるというのは光をだんだん弱くしていって光電子増倍管なりイメージチューブで感度の非常にいい奴で見ますと、ポツンポツンと飛んでくる。ポツンポツンと飛んでくるのをヤングの実験なんかで1個ずつのフォトンを飛ばしてやってもちゃんと干渉がでる。もしそういうのがお好きな方はビデオテープが取ってございますから、後ほど見て頂いてもいいと思うんですが、そのようなことが計れるようになったのです。単一光子の測定という、もうちょっとはっきり言いますと何処から一体出てきたかということ、あるいは何処へ着いたかということが分かってきた。レンズを使いますとそれが何処から出てきたんだというようなことが分かる。それからもう一つは波動性というものの性質を確かめるにはどうするかっていうと、この波動というのは厄介なんですね。時間と共に変化するんです。時間というのはどういうものだというと、今のところ無限に続いているんですね。ですから非常に奇妙な話になるわけですけど、無限に続いていて連続スペクトルもあるということは、それではフォトンの数でいったらなんぼになるのだということになる。無限になけりゃあそうならんじゃないかというと、いや1個のフォトンが少し幅があるのだという話になって誤魔化されるわけです。ですけど非常に短い時間でその時に光の大きさって言いますか、振幅と言ってもいいのかもしれませんが、それがどのくらいあるんだっていうようなことが計れたら、いろいろこれに対するアプローチになるのではないか。具体的にはレーザー核融合というのがございまして、レーザー核融合はレーザーの光がだんだん増幅していって、それで核融合にするだけの強さにするわけですが、1本のビームでもって1本のアンプでそれをやろうとしますと、アンプが溶けちゃう。しょうがないから本数を30本、40本、あるいは100本ぐらいにしまして増幅をしていって、最後に100本のビームを一ヶ所にパンと当てて核融合を起こそうというわけです。まあ今から40年ぐらい前に始まったわけですが、それをやってもみんなバラバラに当たったんじゃあ加熱しない。せめてピコ秒の範囲内で一緒にパンと当てればいいけども、ピコ秒で計る道具がない、ということでお前のところで作れんかということでですね、まあ詳しい話はいろいろおもしろいのがあるんですが、そんなことは抜きまして、そういうことでこういうものが計れるようになった。これは非常に大きな問題で是非理学部の先生方にお願いします、まあ後ほどもう一遍その話は出てくると思うんですけど、こういうことができるようになったっていうのは、連続して、ピコの下がフェムトですね、フェムトの下がアタですかね。フェムトまで行くと光が動く時間は0.3ミクロンしかない。そうしますと可視光の光では、半分にちょんぎらなきゃいかんというような話になるわけです。そういうことが、例えばフェムト秒や毎ピコ秒でもって計れるという話になると、ダイナミクスが見れるんじゃないかということになる。ものが変化してますよ、という話がものから光が出れば、ものの糊の変化が分かる、ものが変化している状態は一体どうなっているのだということが、ちゃんと分かるということですね。いわゆるダイナミクスのフィジックス、というふうなことがちゃんと分かるんじゃないかと思うのです。これもう一遍最後に申し上げますけど、今申し上げれば最後に申し上げることもないのですけど、熱力学というのがありまして、私は一番嫌いというか訳の分からん学問だったんですが、熱力学というのはうちの若い連中に聞くとあれは平衡状態の物理だという。ある状態、ものが平衡状態になっている時の熱平衡の記述だという。したがってものが変化しているときのダイナミックな、サーモダイナミクスというのが今無いと。それでいて我々実は生命現象ということを勉強しようと思って遺伝子がどうのこうのって大威張りで、この中でも研究しておられる方がいると思うんですが、生命っていうのはじーっと止まっているわけでもない。時々刻々変化しているんだと、でありながら時々刻々変化している現象を、平衡状態での規律でもって解釈しようとするところに、僕は基本的にまだ間違いとは言いませんけど幼稚さがあって、だから片づかないと思う。本当に生命現象を掴みたいなら、あるいは生命現象でなくても、世の中の全ての問題が平衡してますよっていう話はまずあり得ない。いや、あるかもしれませんけどそれが研究の対象にするっていうのはもう終わった。だからこれからはダイナミクスということにチャレンジしていかなくてはならんだろうと思います。しかしながらそれに対する基本的な物理がまだないというのはおかしな話でございます。そういう意味でこの毎ピコ秒の測定が出来るようになったということは大事です。今私共で出来る測定で全部が片づいちゃうということは絶対申し上げません。まだその入り口の話だろうと思うんですが、そこら辺をよく考えて頂いたら、非常に面白い話が出るんじゃないかと思います。
ここで、実際に撮った絵をお見せいたしますと、「モヤシ」でございます。あの大豆のモヤシ。大豆のモヤシから、こんなような奴を真っ暗闇におきまして、こういうフォトンが1個ずつ飛び出てくるのを写すような機械を作りまして、それを計りますとこういう絵が取れます。この色の違いはインテンシティの違いです。フォトンの波長、色ではございません。赤いところが一番たくさん出ているところです。これ両方あわせるとこうなるわけですが、この一番たくさん出ているというのが実は、この大豆の成長点から出ているのです。これは岡崎の分子研の先生がそういうことを、どうやって見つけたか知りませんけど、見つけて頂いて我々に教えて頂いたんです。最初はそうじゃないという話で、その次はそうだという話ですから、今のところそうだっていう話の方が優先していると思うんですが(笑)。これが生物フォトンというのを世界で最初に取ったものでございます。これは5、6年前に出来たんですが、前はもうノイズだらけの絵で、目を細めて見て下さいなんて言ったんですが、今はこんなにきれいに見られます。カルシウムなんていうのはいろいろ体の中で動いているというのがありまして、あれはみんなこんなような道具を使って計ったものです。計れるようになると途端にカルシウムが大事だ、カルシウムが大事だって言って、哀れな子供はお袋にカルシウムの錠剤を飲ませられてるんですけれども、そのうちにまた他のものが出てきますから、まあそういうことだと思います。
これと同じような応用で、これは農学部の先生がお見えでしたら、是非覚えておいて頂きたいと思うんですけど、これは静岡県の農業試験場が磐田にございます。むかしの農学部のあったすぐ側なんですけど、そこの先生方とうちの連中が一緒にやったわけですが、サツマイモがフザリウム菌というのに感染しちゃうと芋が全然甘くなくなっちゃう。甘くなくなっちゃうだけじゃなくて、その芋から苗を取って植えるとそれも甘くない。甘くなけりゃあ太らんでいいじゃないかと言ったんですけど、それではやっぱり売れない。それで、この芋の切り口にフザリウム菌をイの字に書いた奴を普通の照明と普通のカメラで取るとこのように写るわけです。で、これをさっきのシングルフォトンの見えるカメラで取りますとこういうふうに出てくる。もちろん色はインテンシティの違いでございますけど。まあ我々最初に絵を出す時には、高柳健次郎以来、「イ」という字を使うことになってまして(笑)、そういう命令を一切出してるわけじゃあないんですが(笑)、うちの中で不思議に何かやるときに「イ」という字が使われる(笑)。そういうことからこれを是非研究したいということで、私共にお見えになってですね、この研究を進めるのに、今まで全部お前のところの機械をただで借りて使っていたけど、機械を買ってやるから知事に予算をくれって言ってくれっていってきた。「承知しました。」って言って、実は言うのを忘れちゃったんですが、ちゃんと知事が予算をくれました、とまたお礼に見えましてね、「どうも有難うございました。」って言うんでその時に「先生、サツマイモが甘かろうと甘くなかろうと天下の大事じゃないじゃないですか。」とそんなもの大の男がなんでムキになってやるんだといったら怒られましてね、これは免疫の作用だと、免疫作用がどういうふうにして起きているんだっていうその機序が分かるということは、お前の体を助けることになるんだって言ってえらい怒られて、申し訳ないとあやまったという話ですけど(笑)。
そういうようなことの道具にこれがよく使われているのですが、私は前から言っているんですが、なぜ一個一個のシングルフォトンの波長が分からないのか。それからシングルフォトンが偏光をしているというが、どっち向きの偏光だっていうことが分からないのかと。一個飛んできた度にそれなんぼの波長だというのが次々分かって偏光もどうだって分かれば、その持っている情報というのはもっといろいろ取れる。もっと言いますと、きれいな絵が写ってますけど、これももとを正せば、一個ずつ粒が飛んできているんだっていう話になる。そうするとひとつの位相のところへ毎秒、一個ずつ飛んできたとすれば、一万秒待てば一万個になるじゃないか、そうするとそこの升目の個数を勘定して掛ける一万とやれば一万秒ためた絵になっちゃうじゃないかというんです。いちいちテカテカ一万秒待っていることはないと。それが規則正しく来るのか、あるいはある分布をもっているのかというふうな話から、そのシングルフォトンの性質が分かってくれば、ひとつの升目に3つぐらいあれば、あと全部分かるじゃないかということを言っているのです。まあ社長もいい加減なことを言うなと言うんですけど、是非この中でそういうことを、若い方がやって頂けたら有り難いと思うんです。
それで、まだあります。もう時間がないかもしれませんが、その時は飛ばしますけど、今、ハワイのマウナケアという所で写真を撮って喜んでますが、百億年前の絵が見えたといっている。ニュートリノが飛んできたのは16万光年昔だという。天文の人っていうのは、非常に天文が楽しいとおっしゃる。近いところからうんと昔まで全部その中に分布しているから、というのが東京の天文台の台長さんのご自慢なんですが、私は伺ったんです、「先生、それはそうだけど、今はどうなっているんだ。」っていって。16万光年昔、16万年昔に起きたのがこの現象だって言われたって、わしはあんまり嬉しいとは思わないと。それより明日どうなるんだっていう話をですね、少なくとも今どうなっているんだという話を知りたいと思わんのですかって言ったら、そんなことはできっこないって言うんですよ。だけれどもこのシングルフォトンがそういうことで、今から16万年前にはシングルフォトンがこういう形でこうなってたということが分かれば、これが16万年経った今ならどうなのかっていうことがですね、類推するその方法が出来ないということはないはずだと思うんです。分からないから16万年前だと、100億年前だっていって、100億年前のところで何が起きようとそんなの大きなお世話じゃないかという話になってしまうのですが、それよりむしろ明日どうなるかっていうことを是非知りたい。ということでこのシングルフォトンというのはあまり馬鹿にしたことじゃないと思います。それで静岡大学の理学部にはこういうものを計る機械がちゃんとあって、立派な浜松ホトニクスの機械があってそれを研究してますかって言うと、どうもその傾向はないんではないかなあ(笑)。ええ、まあそのうちに買って下さると思ってますけど(笑)。
今日は工学部の先生とか理学部の先生とかがお見えになるので、こういうようなことが出来るようになった理由をお話しします。ひとつの大きな理由っていうのは何かと言うと、マイクロチャンネルプレートという板がございまして、これは鉛を主成分にしたようなガラス板です、それに穴が大体直径1インチに百万個くらい、それよりちょっと多いくらいの穴があいている。穴は、ちいちゃいのは6ミクロンぐらいから大きいのはもっと30ミクロンぐらいまでありますけど、そういう板がある。この板はこの真ん中に電子が通っていくと、この中を通っていくうちに電子が増えるという板であります。ふつうの《フォトマルチプライヤー》というのはこの穴が一個なんですね。まあそんな小さいのはありませんけど。ようするに穴一個の作用しかしないようなものでやってますけど、これは小さいものをたくさん持っているもんですから、前の方からこの上へ電子レンズでフォーカスしてやりますと、この中を電子が通る度に増えちゃう。したがってこの大きさでもって、電子画像を増やすことが出来る。画像の増幅が出来ますよというわけです。これはアメリカ軍の軍の研究で始まった。アッツ島で日本軍がやられちゃったというのは、それ以前は暗闇で見えるっていうのは赤外線で照らしたんですね。ですからこっちで赤外光の発光点を見るのに対し、向こうはこっちを照らして向こうへ戻ったのを見ることになる。こっちは半分来たところを見るわけですから、こっち側の方が早く見えるわけですよ。だからその光源に向かってボツンと打ちゃあ、向こうが先に死んじゃう(笑)。というわけで赤外線で照らすのは駄目だということになった。だからどうしたっていったら暗闇といえども光はあるだろう。だからその光を増幅することによって見えるようにしようというのがそれで、この板を作った。だからアッツ島では日本軍はもう暗闇だから敵からは見えないと思ってのんびり立ってて、赤外線が来るかどうかを見てたんですね。と、赤外線が来ないで鉄砲の弾が飛んできた(笑)。
それと同じようなことで、これがその電子管の原理になるんですが、これは《ストリークチューブ》と言って、この真ん中に偏光板を置きまして、この偏光板がなければ普通のイメージ管で、ここに光電面があってここにマイクロチャンネルプレートがあって、後ろに蛍光体がある、そうするとそのまま絵が写るわけですが、このストリーク管というのはここへ偏向板を置いてやってその前に加速電極というものを入れているんです。これが素早く電子をここから引き出すというので、ここへ相当大きな電圧を掛けるわけですが、それで出てきた電子を偏向版で振ってやると、こういうふうな時間変化がこっちの方に広がってくる。ここに出来た絵というのは、これが最初の変化で、後の変化の状態がここへ出てくる。1フェムト秒はまだ出来ませんけど、一番速いのは分解能として大体15フェムトぐらいまでは、今やれるようになっております。ですからこういうものを連続的に変化するような光の計測に使いますと、短い時間でどういうふうに変わっていったかが分かる。例えば分光計、このまま置きますと、横軸に波長情報、縦軸に時間情報が出て、時間的に波長の変化がどういうふうに出たか、というふうなことが分かるような道具は既に出来ております。ただそれを《フェムトセカンド》でもってバッバッバッっとやってというのは、まだ出来ていませんけれども、そういうものを使ったら、先ほどのダイナミックな、サーモダイナミクスというものの入り口位のことは研究できるだろうと思います。研究したいと言う方がお見えでございましたら、一緒にそういうものを作りたい。その作るお金は科学技術庁かどっかでうまいことを言って貰ってきちゃおうと思っていますが。
それで、次に、いろんなことがございますけど光でやろうとしていることに、今までの話は理学部の先生の専門でしたけど、今度は、これも理学部ですか、生命現象、これは医学部か。ご存じのように細胞の模式図でございます。今から細胞の講義をするつもりは毛頭ございませんが、これが要するに人間でも植物でもそうですけど、形成しているもとのレンガです。細胞がもとでそれが組み合ってる。ところがこれがレンガと違うところは、中味がこんなにいろいろある。それと同時にこんなにごちゃごちゃ、なんか2千ないし3千個の物質が入っているそうですけど、外からいろいろな物質が入ってくる、あるいは情報が入ってくる、刺激が入ってくる。それによってこの中がいろいろ応答して、遺伝子か何かを刺激すれば、そこがミトコンドリアで何か新しいものを作って、それが外へ出ていくなり中で消費される。これがひとつのコミュニティーをちゃんとなしているわけですね。だから人口2、3千人の村があると思っても大体間違いない。ですからこれが隣と通信をしているのみならず、もっと遠く離れたところとも交信をしているらしい。それで実は今のところ細胞間通信といいますと、何かここのところでホルモンみたいなものがとりついて、その情報みたいなものが中へ入ってくる。そういうことはいっぱいあるんですけど、こっちとこっちと直接奴らがやってるぜっていう話は、ほとんどご存じない。それが何よりの証拠としては、我々の体が大体60兆個くらいの細胞で成り立っていると言うんですね。その細胞がお互いに情報の交換をしながら、腹が減ってきたら飯が食いたいと思わせちゃう。血圧をちゃんと制御するとか、あるいは体温を適当に調整するとか、あるいは1分間に何回呼吸するというようなことですね。そりゃあ、呼吸は一生懸命やろうとすれば何とかなるかもしれませんけど、脈を速くするなんていうのは、よほど興奮でもしなければ独りでに変わりませんよね。そういうふうなことが全部細胞の一活動でもって我々の体を維持しているんです。ですから私が私がって、威張っても仕方がない。俺は親分で全部そいつら部下だって言うんなら、それじゃあ今朝起きてから60兆個の細胞にひとつひとつ今日は何をせよって命令してきましたか。いくら速くものを言える人でも60兆個の奴に言ってたら、まあ未だに布団の中にいるんじゃないかな(笑)。ということですから、絶対60兆個の奴が自治活動をしながら我々の体を維持している。じゃあ自治活動というのはどんな風になっているのか、60兆個をコントロールしているCPUは一体何処にあるんろう、これは遺伝学、私共じきにその分野の国際会議をやりますけど、そこへ来た偉い人に、まあみんなの前で聞くと恥かかせますから、晩飯でも一緒に食って少し酔っぱらったなという時に聞いてみると、大抵そんなことは考えないほうがいいよお前っていう(笑)。ですけど本当のところはそれが一体なんだっていうのが分からないでおいて、人間の体を健康にするというのは大間違いだと思うんです。それと同時に己っていうものに対する認識をはっきり持たないで、なんか俺が俺がと威張っているのは、おかしいんじゃないか。そこのところを是非ご理解頂きたい。いろいろもったいらしくいったり遺伝子工学だといって、医療にも使ったりしている。使えるものは使うのに文句はないんですが、それで本質的にもう分かっちゃうんだというものじゃないんです。60兆個の奴のCPUといったらどのくらいの計算機能がないとそれが出来ないのかと、ちょっと考えて頂いたら有り難いと思うんです、大変な問題だと思いますけど。
次に、生命のほかに人間の体から言うと、心って言いますか、神経活動と申しますか、そういうものがございます。これから少し話が横道にそれていきますけれど、これが神経細胞の模式図だといわれるものでございます。これが毛細管でこれがグリア細胞で、これが、この3つが脳細胞です。ご承知の通りこの《アクソン》という線でもって繋がってて、これが電気信号を伝えてて、この中で方々から来た信号によっていろんな動作をしながら、例えばこっちにも持ってくる。ここのところをシナプスと言ってこれが次の細胞に繋がってるんですが、ここは実は電気信号がスーッと伝わっていくんじゃなくて隙間があって、このシナプスの先端に神経伝達物質という物質が入っていて、それを刺激することによって次のシナプスへ、それが細胞へ入っていって、またその中で情報活動をするというんです。ですから神経活動というのも言ってみれば物質の作用です。だからそんなもの神様だということないと。細胞も実はそういうことで遺伝子だとかなんとか言ってますから、こういうタンパク質の作用でもってその細胞というものは動いてる。神経細胞もそうだというふうなことで、ですから、何で生きているかっていうのは、細胞の60兆個のCPUを見つけりゃいい。しかし、こっちの方はじゃあどうするんだということになる。人間の頭の中で何が起きているかっていうことを見ようというのは、医学部へ行って死体をもらって頭を切り刻んでも出てこないんですね。どういう構造になってるかということは分かるけど、喜んでみろと脳にいくら言ったって、死んだ奴は喜ばない。したがって脳の活動とか生体機能を計るっていうことは、生きているうちにそのまま計るって事をやらなきゃあ、これは分からない。今だと多少そういうことが出来るようになってきましたからあれですけど、一昔前ですとそれはもう絶望的だった。やっぱりそれは神様というのがご存じだなあということになったわけですが、それがどっこい、高エネルギー物理の方でポジトロンというのが見つかるようになった。
ポジトロンというのは何かというと、《ポジトロン放出核種》というのがある。これは、天然にはございませんで、サイクロトロンで作るわけですが、どんなものがあるか後ほど申し上げます。そこからポジトロンが出てくる。それはプラスの電荷を持った電子です。でプラスが出ればマイナスがそこらにあるわけですからそれがぶつかってチャージがなくなって、消滅γ線と言う2個のフォトンがほぼ180度反対の方向に飛んでいくというのが、フェルミナショナルラボラトリーで今から80年くらい前に見つかったんですね。まあ見つかっても最初は嘘つけって話になったわけですから、なるほど本当だなということになったのはまあ10年ぐらいかかった。それじゃあこれを人間の体の中に入れるような物質にするために、核種をつけてやろう、それで体の中に入れようとなった。例えばこの酸素の15っていうのはそうなんですが、それと水素と反応しあって水になって水を注射してやると人間の体の中に入って、肺でもって血管の中にそのOの15が入っていく。それでボランティアの学生さんかなにかに一生懸命数学を考えてもらうと、例えばですよ。そうするとここのところが働く、そこが働くから酸素がそこで消費される。酸素がたくさん行きますとさっきのOの15がここに貯まる。貯まるとどうなるかって言うとそこからこいつが飛び出てくる、あちこち、まあ上方にも出るわけですが。でそれを周りに《ディテクター》を並べて置いておいて《シンチレーターとフォトマルチプライヤー》の組み合わせが主でございますけど、そしてこことこことが信号を受けたな、カチンといったな、あるいはこういったな、こういったなということをコンピューターの中にためて画像の再構成をやるとこういうふうな絵が出てくる。でここで数学を考えているというふうなことになる、というのが原理でございまして、こういうふうなことをやろうというのが《ポジトロンエミッショントモグラフィー》、PETと言ってますけど、まあそういうことです。浜松のさる大会社の有名な偉い方、役員の方がうちの会社の研究所にお見えになって、それじゃあ今からPETを紹介申し上げますって言ったら、「うん、俺もペット大好きだ。猫か犬がいい。」って言う(笑)。「やあ、うちは猿をやってます。」って言ったら妙な顔をしていた(笑)。ですからペットにもいろいろございますから、お気をつけ頂いたらと思うんですが、これがまあさっきの標識薬剤と言いますか、ポジトロン放出薬剤ですね、で、カーボンの11、窒素の13、Oの15、Fの18、それにカッパーのいくつかというのも最近なんか使うようになりましたけど、要するにひとつずつ足りないんですこの数字が。それで半減期がこんなに短いと。酸素なんか2分ですから、せいぜい使えるのはこの5倍くらいの時間しか使えないというんで、酸素を使ってさっきの実験をやろうなんてのはえらい忙しい思いをして、サイクルトロンで作った、薬剤合成した、体の中に放り込んだ、コンピューターまわして、ってこういう事をやらなければいかんというので、東京で作って浜松で使うという話はできない。自分の研究所のにでサイクロトロンまで作らねばいかんということで、なかなかそれがうまいこと使えないわけですが、私共は自分の研究所の中にそれが出来たっていうのは大変幸せだったと思うんです。まあそれと同時に今このOHPは15年くらい前にもらったもので、今は薬剤、この標識薬剤がこのぐらいの紙にもっと小さな字でベタベタに書いた奴が5、6枚あります。で、こういう薬剤をどう作るかということになります。
従いましてこの例でお分かり頂けると思うのですが、ポジトロンCTをやろうとして、佐藤学長のところへ行って、どなたか教授を紹介して下さいよと、これ一緒に研究したいけどって言ったら、一体どなたを紹介してくれるんだろうなと。当然、医者でなきゃまずいなと思いますけど、お医者さんというのはあんまりものを知らない。サイクロトロンまわすなんていう話になると、高エネルギー物理だから、これ理学部の先生かなということになる。そこから出てきた話を今度は標識薬剤に合成しなければならない。で、標識薬剤を合成すると薬学部か、あるいは生理衛生か、まあなんか知らないけどそういう方の先生となる。それから今度はコンピューターを作るっていうような話になりますとこれは工学部だと。そこでシンチレーターかなんかというとこれ化学だとなる。こういう話になってですね、いろんな人の話がないと駄目なんです。今は何か考えてみようと言ってみますと、全ての事柄がそういう非常に幅の広い領域に渡ってないと産業界としてはものが完成しない。ですから産学協同っておっしゃいますけど、そういうところをどうするんだとなるんですね。これが、私の悲願でございまして、しかも今までにないものをやろうとなりますと、誰と誰を組んだらいいかっていうことが分かれば、もうしめたもんです。あとはその先生を何とかおだてるか、尻ひっぱたくか何とかすりゃあ動くだろうということになるんですが、どういう仕組みでやったらいいかも分からんというのが、本当に世界中が誰も知らんという事なんですね。今日実はお話申し上げたいというのはそこのところでございまして、たまたまこの例がひとつの大変いい例だと思うのです。
それからまだ喜ぶとか嬉しいとかがあります。で、嬉しいとは何だろうと。これは理工系じゃあどうにもならんので、文系の先生方にお願いしなければならない。まあ心理学なんかはどこのものだか知りませんけど、医者にも心理学っていうのがあるんですね。医大へ行きまして心理学がないと困るなんていったら、俺のところに心理学いるよっていう。それは要するに、気の狂ったのをいかに誤魔化すかというのが(笑)心理学でして、嬉しいっていうのはどういうことだという話はあんまりないみたいです。それで私共のところでは、ちょっとこれ付け足しの話でございますけども、さっきのPET、ポジトロンのカメラを、カメラだけ売ってもしょうがないので、この値打ちがあるものは自分のところで使わなければっていうんで、これがうちのPETセンターで、これはさっき言ったような猿とネズミ、それからたまには犬なども使ってますけど、主にもう今はネズミと猿でございますね。この向こう側にありますのが、これは市の医療センターに頼みましてここへ分室を作ってもらったんです。作ってもらったっていうのは、実は建物と機械は全部うちで金を払って、市へ貸してですね、そこへお医者さんが来て、患者を連れて来て頂いて計っているということです。今そのひとつの例をお話ししたいと思っているわけですが、こういうものが、頭部用の機械と全身用の機械、これは去年の今頃こしらえまして、納めましてですね、これはちょっと穴が大きいわけですが、あの、頭部用は穴が小さくて2.8ミリなんですが、これは3.5ミリくらいの分解の能力がある。世界一でございます。ともかく我々のところで威張れるのは、ここで使っております光電子増倍管が全部うちで出来ます。豊岡村に電子管工場があるんですが、そこの連中を連れてきて、こういう機械があると見せる。お前の作る高電子増倍管が貧弱だからこんなのしか出来ない。これちゃんと良くしなきゃあ癌が治らないんだって言うと、よーしきたって言うのがこれ職人でございまして、それをこしらえてくれる。それが高いか安いかは、聞くと嫌になっちゃいますから、すごくいいよ、たくさん作れって言ってですね、こういうものが出来てくるわけでございます。ですからこれを使うということは、そこら辺にあるものを買ってきて、一生懸命にやって作ってという話、あるいは誰にでも買えるものを買ってきてやるっていうんじゃなくて、よそにないものを、世界で一番いいものを作りますよっていうのが我々の少なくともインテントでございます。
これが、去年の1月に作ってじきに出たデータでございまして、8枚ありますけど、ひとりの人間を縦にこう8つに切って絵が出せるというふうなことになってます。これは横で同じようなことでございますけど、それでこの胃を癌だからって取っちゃった後の人をFDGというグルコースをフッ素で標識した奴を使いまして、どっか病巣が転移したかを見てみましたら、お気の毒にもまあそこら中にあるということでしてね、まあ現段階では甚だ残念でございますけれども、この方も延命措置ということで抗ガン剤その他で多少は生きられたと思うんですが、多分もうこの世にはおられないんじゃないかという気がします。後はあんまり聞いておりません。それでこの計った測定で分かったっていうことは、これがコンピューターのいいところで分解能力がいいとこういうふうにいろいろ拡大できまして、ここのところを横断画像にしますと、こういうふうに出てきて、こういうふうに黄色い。ここが骨転移だと思いますけど、ここのところはですね、腎臓にあるよと。それから腸管部だとか腹部内の転移だとか、こういうのがみんなそうです。この黄色っぽいような色の大きさのは普通のγガメラという今の医療で使っている道具では絶対見えないという。この赤い奴は分かるそうですけど。これも腸管の中で、まあ腸っていうのはぐるぐる回ってますからあちこちですけど、これ直腸にも転移している、出てる。それでまあ、おそらく駄目だろうというんです。
ただ、今一番厄介なのは、早期発見ならば治りますよという方法があるんですが、これだけひどくなっちゃったけどまだ本人はピンピンしてるという場合ですね。まだ寿命はあるだろうと思えるわけですが、しかしながら今のところは、まずどうにもならない。それで全く違う大学の先生から、この《PDT》、《フォト・ダイナミックス・セラピー》って言うんですが、光でもって癌を治しちゃおうかというのを開発いたしまして、今ではこの機械が医療器として認められております。もう2年ほどになりますが、これはフォトフリンて言う、染料ですね、それを体の中に注射してやる。そういたしますと、24時間ないし48時間くらい経ちますと、癌のところに残って他のところは大部分がもう体外へ出てしまう。そこへ桃色ぐらいのレーザーの光を内視鏡を介して当ててやりますとこの中に入っておりますフォトフリンがですね、光によって分解を起こして1重項の酸素が出てくる。その酸素が癌細胞を殺してしまうということで、早く見つけますと非常にうまくいきます。ですから胃癌だとか肺癌だとかにいい。これは肺癌の肺門のところの癌が、こういうふうにきれいになっちゃったという奴ですけど、特にお年寄りでとても手術したんじゃあ助からん、体が持たんというふうな方はこれやりますときれいになるというんです。こういうようなことが見つかっておりましてですね、どうでもいい話ですけど、そういう機械が現実にあるんだっていう証拠を見せているわけです。話だけしてるんじゃないかと思われたらいかんと思って申したんですが、そういうふうなことが出来て、今、日本全国で買って頂いております。浜松は医科大、医大と浜松医療センターにございまして、静岡は残念ながらどっこもない(笑)。浜松に住んでいますとここにありますから、うちの会社の連中が紹介した方は何とか入って、皆さんそれで治った。まあみんなじゃないですけど、私の知ってる人は電話を掛けてきて「有り難かった」と。家の親類が実は子宮経口癌でちょんぎっちゃうといっていたんですが、まだお嫁にいってない奴がなっちゃいまして、それをお前のところでやってもらったら治ったとかですね。それから浜松医大は喉の先生がそれをもっぱら使ってましてですね、喉頭癌ていうのがございます。喉頭癌ていうのは治りはいいんですけど、だんだんひどくなってくるともう切りますかとなる。で、切っちゃうと声帯がなくなりますから喋れなくなっちゃうんですね。それがごく最近、ある新聞社の若い人がそれでやったら治っちゃった。そこでそこの新聞社の同僚が正月早々私のところへ来まして、人の顔を見るやいなや、申し訳ないっていうんですね。こいつ俺に何かしたのかなぁと思ったんですが、「今まであんたが癌は治るって言ったけど、またこの社長もいい加減なほら吹きよる、光なんかで癌が治るわけがないと思っていた。それが私の同僚がね、もう声がなくなっちゃうっていって、本人も大変悲観していて、もう髪の毛は全部、治療でもって抜けちゃって、やつの最後の望みでやってみたら治っちゃった。本当に申し訳ない」って涙流して謝ってきました。そんな涙流さんで一升ぐらい持ってこいって言ったんですが(笑)。特に若い女性は、最近の若い女性っていうのは不思議に子宮経口癌になるんですね。昔は子宮経口癌ていうのは大体閉経になった人が、おばさんがなりますから医者の方も割合気楽で、これはもう転移するぞと思ったら、やりましょうって言ってざっくり子宮切っちゃった。ざっくり子宮切ると子供産めなくなっちゃう。子供が産めなくなりゃあ楽じゃないかって言ったんですけど、それが不思議なことで産めなくなるとよけい産みたいという。産める奴は産みたくないっていうしね(笑)。ですから、子宮経口癌はもうほとんど百発百中いけます。それからこの光でやる方法のいい事は、うまくいかなかったらもういっぺんやればいいんですから。包丁使ってなんかするのは切り損ねたら大変ですが、これはそういうことをやってますから子宮経口癌と喉頭癌は絶対に大丈夫です。
今そういうことからですね、ここの静岡大学ではなんぼ言うても一緒にやろうっていう人はあんまりいないかもしれませんが、新しい薬剤が見つかったんです。ATX−10というタグナンバーですけどそういうのがある。このフォトフリンに似たようなものなんですが、それをやりますと今までは48時間から72時間待たなきゃならんのが、5,6時間静脈注射した後で、もういいよという。副作用はまあ少ない。こっちですと4週間も病院にいなければならない。というのは済んでから後、太陽光に当たったら色が真っ黒になるという。これ人によって違うんですけど、長い人は4週間ぐらいいなければいかん。本人もまあ、何もせずにただ日の当たらん暗いところにずうっといるのも厄介ですけど、一番嫌がるのは病院なんですね。この患者から銭の取りようがないって言うんですよ。飯食わせて寝かせてるだけだと(笑)。ちょんぎるとか何かやれば保険の点数取れるんですけど、飯食わせて寝かせてるだけじゃあ銭にならんというので、それで病院で嫌われちゃうんですけど、こういう薬を利用すれば速くなる。 それからもっと更にいいことは、進行癌や深部癌治療に挑戦できるという。これ今浜松医大と一緒にやってるんですが、光を当てるだけですから何も今のように内視鏡でやることはないじゃないかとなる。中国の針療の針。あれは長い針を、体にぶつけますね。ですからあの真ん中へ光を通して先端からしかるべく出るようにしといて、癌の部位がPETで分かったら、そこのところへザーッと放り込んでみるとか、大きければ2、3本放り込んだらどうだろう(笑)。これがですね、私の話は信用してもらえんのが常なんですからあれですけど(笑)、そういう実験というのは犬でやるんですね。これは、実験でできたもので、これが乳癌。犬というのは癌は乳癌しかないんだそうです。で、この乳癌のでっかいのに今の薬を注射しておいて、ここへ針でやる代わりにファイバーを通して、ファイバーの表面はヤスリって言うかペーパーかなんかでスーッと擦っておきますと光が出てくるんですね。で、こっちから光をいれてやって、2週間経ったらあら不思議、治っちゃった。これはいけるというわけですね。これを今なんとかして、癌のそれも深部に見つかった奴を片っ端からそれで治しちゃおうということで研究している。その前に、早い時に見つけて、今の話のをやってやれば、切るわけじゃございませんから、割合簡単に治っちゃう。これはこういう会社をつくってその薬をやってるんです。
PETっていうのはそういうことで段々良くなったっていうので、アメリカが一緒にやりたいと言ってきた。ハワイでですね、クイーンズ・ホスピタルっていうのが、ハワイにございます。ご存じですか。そこへ私共のPETを持っていきまして浜松クイーンズPETイメージングセンターという合弁会社を作った。我が方は3割だぞというんで、向こうがいくら金使ってもうちは3割ですから、独りでに評価が増えるんですね。もっと使え、もっと使えとやるんです。そういう妙な契約をして我ながら良いことを言ったなと思っているわけですが。そういうことで、今のような話を日本からアメリカへ持ってって一緒にやろうと進めているのです。一緒にやろうっていうことは機械だけ持っていけばいいじゃないかと思われるかもしれませんけど、実はこのPETを上手に使うっていうのは、サイクロトロンを上手に使うということなんです。それから薬剤を合成することなんです。この薬剤は、どういう人にはどういう薬剤をどのくらい入れたらいいんだということをしなければならない。それをPETでどういうふうに読むかというようなことが必要で、その一連の作業に5、6人の人間のコンビネーションがいるんですね。日本の大学ではそういう機械を持っているところがあるんですが、残念なことにエンジニアの金が出ないもんですから、大抵そこの院生か何かをこき使ってやる。そうするとそろそろうまくやれるようになった頃に卒業しちゃうわけですね。ともかく学生さんの方は博士論文さえ書けりゃあ、後は知った事じゃないわけですから、いつまでたってもろくな事は出来ないというのが日本の大学のPETなんです。うちのほうはそういうのはないわけですから、自分の思いこみでもってともかくその生態の神秘さと申しますか、あるいはもうひとつは正義感に燃えるって言うか、うまくすれば金儲けになるという気持ちもあるんでしょうけど、病気を治そうとかの研究を進める。一番私共がこれで狙っていたいのは、人間の頭というのはどんなふうになってるんだ。心ってのは何だ。何であの選挙の時に、何のたれべえって書くんだということですね。それが分りゃあ、みんなに《塩谷立》って書かせりゃいいんじゃないかってのが私の持論です(笑)。で、ハワイでそういう話をしたら是非一緒にやりたいって言うんで、合併会社が出来たのです。この2番目の男、これがハワイの州知事です。これは完成式の時の写真で、牧師さんが来て、こういうのをみんなにかけるんですね、これが正式なんです。ハワイの人はみんなアロハばっかり来てると思ったらやっぱりちゃんとした人は(笑)。ということでこの人、この写真のようにテレビで写ったりなんかしてわあわあやったもんですから、絶対落ちるっていったのが当選しちゃった。ですからハワイへなにか行くことがあったら私に言って頂ければ、知事で済むことなら、大抵のことなら何とかなります(笑)。
それから、ポジトロンカメラのもう一つの利用法としましては、一体植物に神経はあるのかという研究です。これはまあ、いろいろですけども、普通ちょっと学校で習ったという人で威張っている人は、植物には神経はありません、植物のどこ切り刻んだって神経繊維はないよというんで神経はないという。そうかってわけですが、そうではないといって始めたのがこれです。ポジトロンで葉っぱを見るのは2次元でいい。奥行きはいらんというんで、こういうフォトマルチプライヤーで測定できる。要するにひとつのフォトマルチプライヤーにたくさんのフォトマルチプライヤーが入っているというようなものを作りまして、それにモザイクのシンチレーターをつけて、二つ対抗して同じような測定をするわけですね。そうすると何が取れるかっていうと、こういう絵がとれる。バラの花に水をやってこの水の中にさっきのFの18を入れてやる。これだと2分間のみ入れてやったと書いてあります。それでここのとこだけ絵をとってみたのがこれです。最初はバラは花が一番大事だろうから水がサーッと上がっていくと思ったら、そうじゃなくて一番手近なところの葉っぱへサーッと行った。まあよっぽど腹が減ってたのかもしれません。それでここが概ねいっぱいになったら、今度は真っ直ぐ上へ上がっていった。ということは、このバラの木のどっかにですね、最初の水はここにやれというのを決めて、そこがいっぱいになったらもう俺のところはいっぱいだよって誰かが言って、それじゃあお前ここのバルブ締めて上へ行かせろということをやって、それで今度は水が上に上がっていった。これで植物に神経がないってどうして言うんだということでございまして、植物にもし喜怒哀楽の神経があれば、この花喜んでる。実際トマトを栽培して水耕栽培をやっている人なんかは、ベートーベンの何とかを聞かせるとちゃんと早くできるとか、本当か嘘かは知らないけどいいますよね。ですから人間の神経の生きてるうちはあのPETで分かりますけど、それじゃあついでに切り刻んでみるかっていうのは、やっぱりまずいのでそれは死んでからにしてくれとなる。植物でこれが分かれば、まあさんざん切り刻んで、残った奴は茹でて食ってしまえばいいっていう話になる(笑)。これは大変便利だなと思っていましてこういう植物神経がどうなっていくかという研究は、実は高崎の原子力研究所と共同研究をやっているわけでございます。是非静岡県の中でもこういう様な仕事をやって、植物というものに神経があるということを明らかにしたい。後ほど話しますけど、植物を植物工場で育てたいというプランがございまして、その時に植物に神経があって、それはこういうふうに神経を刺激してやるなり、こういう薬をやると、植物がもっとこういうふうになるっていうようなことが分かりますと、随分変わって来るだろうと思います。植物の神経安定剤なんてのはどうだというのがありますけど(笑)。そういうふうなことから、生命現象っていうのは今までは物質と後は神様のものだというふうな話を、多分文化系の先生方はおっしゃってるんじゃないかと思うんですが、今はそうじゃなくてライフっていうのは物質の作用だ、ただ物質の作用が我々分かってないんですよということじゃないかと思うんです。その物質の作用というのは実は光が解き明かすことが出来るんだということから、話の一応の結末はそういうことでございます。
これは大阪大学のレーザー核融合の実験室です。非常に大きな設備でございますが、この月光12号というのが、これ人間の大きさ、このくらいでこの大きさ。ここのところにレーザーの増幅器がに入っております。これでもってやりましたことは、ともかく一発レーザーを出して核融合をやると、使ったエネルギーだけそれでとれる。臨界って言うらしいんですけどね。そういうことが出来るようになったということで、今度はそれを何とかしてものにしたい。レーザー核融合はご存じでございますか、文化系の先生も……。これがまあ大阪大学の先生からもらったOHPでございまして、レーザー核融合というのは今のところ、大阪大学でやってますのは、このペレットの中に重水とトリチウムを入れておく。そのペレットを、外からレーザーの光を均等に非常に短い時間にものすごくたくさん、メガワット、テラワットですか、級のレーザーでこれを当ててやる。そうしますとこの表面から、ものすごい勢いで爆発が起こる。それはどういう意味かというと、ここにロケットがたくさん並んでると思ってください。ロケットの尻からガスがパアーッと出ると頭はどっちへ行くかというと、中へほおり込まれる。ほおりこまれるってことは中が圧縮されるんです。圧縮されることによって中のトリチウムの原子核と重水の原子核がギュウッと押しつけられて、くっついちゃう。それが核融合だといいます。その時にすごいエネルギーが出るということで、あの《トカマク》みたいなやっかいなことはないという話ですが、そういうことでずうっと実験をやってきてどうやら出来るようになった。さっきのたくさんある棒の一本がこれでございますけど、こちらの方からレーザーの発信がしてありまして、段々大きさをレンズで成形しましてこの中で、これが増幅器なんですが、これに板がございまして、このところを大きく開けてみますと、これが板でここが蛍光灯みたいな放電灯です。これを外側からかぶせてすごい明かりをここへ出して、さっきの電子をみんな上へ上げる。上げておくとこちらの方から種のレーザーがすとーんといきます、この上がってるのを連れ子にして下りていっぺんに持っていくというのが、レーザーの増幅ということで、それでまあ一発目はうまく出来た。ところが一発だけ出来たんじゃあどうにもならんので、それを産業用に使おうとすると少なくとも1秒間に10回ないし12回は連続してやらなければならない。そうすると温度がものすごく上がっちゃうのが何ともやっかい。そうならないようにならないかというのが話のもとでございまして、それを解決する手段としては、この青い色がその中のガラスレーザーの吸収のスペクトル、これ波長でございますが、ミクロンです。こういうふうなところの光だけあればいいのに、放電灯でこのくらいの光を出してる。従いまして、この余分なところはみんないらないという話で、これがみんな熱になっちゃうんです。ですからこの放電灯の代わりに、例えばここの光だけワーンと出るものがあってくれれば、その波長だけをものすごくたくさん出さえすればそれでいいということで、そうすれば暖まらない。こういう半導体レーザーが出来ないかというのがレーザー核融合を成功するためのひとつのキィーテクノロジーだということでございましてですね、それを、不思議なことに我が社にやれと言ってきた。だから出来ないで当たり前で出来たら偉いんです。大会社は出来ることをやれといっているから、出来て当たり前、出来ないとバカだと言われるというのでみんな手を挙げなかったのが、うちの連中だけ手挙げてきて、うまいこと私から予算を掻っ払ってこしらえちゃった。これがまあその問題の半導体レーザーでございますけど、これ出来たからもっとどんどんたくさん作れとなった。電気を安くするためには二束三文で作れ、その代わり数がむやみやたらにいるぞというんで、その製造技術をどうするかとなった。今シリコンか何かでしたら大抵の機械は売っていますね、こういうことやりたいって言ったら。しかし、この何か《カンタムウェル》なんていうことでガリウムヒ素とか何とかって言うような厄介千万なものを使ってこれアセンブリして、しかもその変換効率上げろとかなんとかっていう話は、今まで人類やったこともございませんから、量産って簡単に言うのも難しい。いつやってくれるかとそれこそ祈るような気持ちで毎日待っているわけでございます。そういうことが出来たとなったら、レーザー核融合が今から20年経ったら何とかやれるよっていうんです。これを待ってたんじゃあ、俺死んじゃうよということでですね。生きてるうちに何をやるかというわけです。
まあまだ分からないこといっぱいあると思います。まあそれはまたいろいろ研究していきたいと思うんですが、今我々としてはレーザー核融合がもちろん本命でございます。こういう大出力の半導体レーザーを作った。これは光と物質との相互作用っていう問題を追っかける為の非常にいい道具です。その中でまずさしあたってレーザー加工っていうのはもう既にやってます。で、レーザー加工やってますけどでかいレーザー使ってますから不便だしそれから高い。まあ今の半導体レーザーもすごく高いんですけど、そのうちにあれは安くなるだろうということから、光加工でこういうことができるとか、あるいは超微小加工はどうだとかを進めたい。この間も大阪大学で言われたんですが、あのPL法っていうのがあってどんな小さな部品も全部メーカーの名前書かにゃいかん。それをレーザーでやるのがいいっていうんで、「先生そんな単価の少ないものに。」って言ったら、「お前その方が儲かるんだぞ。」って言われてちょっと心を入れ替えようと思っているんですが。
その他にまあ医療だとか健康・スポーツ・通信・放送・情報・光加工、これは土木。トンネル掘るのに、レーザーで掘れって、穴掘るっちゅうのは掘ること自身は難しくない。ただ問題になるのはその掘った土をどうやって持ってくるかというのが実は金がかかるんですね。だからそれをレーザーでうまいことガスにしてくれれば、そんなにうまいことはない、どんどん掘れちゃう。液体でもまあしょうがないからいいっていうんでまあ何かそうなりませんかなあ。それから廃棄物処理。産業廃棄物もそうですけど、家庭廃棄物もいろいろあって、その廃棄物っていうのは今はもう可哀想に捨てて行く奴はみんな目の敵にしてここに捨てちゃいかんて言われて、じゃあどこに捨てるんだって言うと場所がない。これは私共としてはレーザー、さっき光はものの糊だと申し上げました。逆にそれをばらせと。バラバラにばらしたら今度は糊の方を使って組み立てる。だから廃棄物が、こっちからトラックで入ってきたらここへ置いていけといってそれをガラガラってやると、向こうっ側からいろんなものが出てくる。それをトラックに積んでまた出ていく。入ってくる奴からも金を貰い、出ていく奴からも金を貰うという(笑)、こんないい商売はないんじゃないかと思う(笑)。これなんか、基本的に可能だっていうのがですね、長倉先生って沼津出身の方ですけど、東大を出ておられて神奈川県のなんかカストだとかって言うところの親分をやっておられますけど、私共の財団の理事もやってもらってましてそんな話しましたら、大抵その先生っていうのは私が何か言いますと「バーカ、そんなことは出来ん。」ってすぐに言うんですけど、この度は非常に珍しく「お前、基礎的なものはもうちゃんとあるよ。」って。これは、理学部ですか、工学部、化学ですか、工学部ですかね、是非これを一生懸命やりたいっていうお話の方があれば、どうやってやるかも分からんのですがそうしたい。
それからもうひとつ、農業の話がございまして、これも瓢箪から駒がでたような話ですが、水耕栽培というのは前からやっておりました。レタスを水耕栽培で光を当てて人工照明してやるというのをやっていたんですが、菜っぱつくってもらっても全然ふにゃふにゃなんですね。俺が年寄りになって歯でもなくなったら持って来いって言って返したんですが、電気代がすごく高い。それならいっそのこと、ちょうど米がない時があったもんですからレーザーで稲を作ってみろといって農林省の役人に言ったら「お前な、それだけはやめとけ。」と。藁作るんならいいよ、米作るっていうのはそうはいかんという。こういう話で専門家がいかんというのは私はどうもひねくれておりまして、あいつがいかんと言ったからやってみるかってこういう話でやってみたらですね、70日でこのくらいになっちゃった。種からじゃなくて植え付けてから。だから、70日でということは年に5回出来ちゃう。5毛作が出来ますよとなった。それから更に考えてみたら、何で田圃がスーッと一面になってるかっていったら、あれ太陽で照らすから一面だけど人工照明でやるんなら、5階にしようと36階にしようと勘定さえあえば勝手じゃないかという話でですね、それと同時に何で広がってんだというと病虫害があるという、その為に密植えが出来ないんですが、建物の中でやれば、すべてうまくコントロールすれば密植えが出来るじゃないか。そうすると5倍5倍にして25倍ぐらいの密植えが出来てそれで年5回やって、それでまあ高さ5段にする方が計算上都合がいいんですけど、25の25で625倍の米が出来る。そうすると一反で大体今8俵穫れるのが普通なんですね。そうすると625倍ですからちょうど勘定がいいことに5000俵になる。それでどうやら一反で5000俵、米が穫れりゃあどうだって言ったら、そりゃあすごいって話になりまして。それと同時に米が穫れるくらいならば他のものは何でも出来る。
それからもう一つ最近の話でございますけど、最近ってその道の方はみんなご存じのことのようでございますけど、これはうちの会社のそのことをやってる1人の非常にきれいなお嬢さんが書いてくれた絵でございますけども、こういうふうに、不思議に彼女も5階で書いてますけど、こういうように作った奴が米がまあ、6割がバイオマス。これをアルコールに変えるぞと。そういうふうなことでこうやって、水と酸素だけやりさえすればメタノールがとれてくる。これで自動車走らせたらどうだと。こういうものが出来れば今度はこれをもとにして合成化学でいろんなものが出来るだろう。プラスチックも出来るのと違いますかとなる。そうしますと日本は原材料がないんだっていう話がですね、こういうものがあるので、相当のことまで出来る、第一、石油を輸入しなくても済むって言ったらどのくらい銭が節約できるか、すごいもんじゃないかということから、今非常に希望を持っております。
日本の産業界っていうのは3つの重荷を引きずっておる。実は4番目もあるんですが。えー、この原材料がほとんど国内にない、エネルギー、特に電力が高い、土地が非常に高価である。電力はまあレーザー核融合やることによって1キロワット何とかして3円でやりたい。3円というのは世界の大体一番安い値段でございます。それから、これ今の話で、農地は1パーセントもいらない。そうすると今は500万ヘクタールが日本の農地の全体でございますから、5万ヘクタールで済んじゃう。そうすると495万ヘクタール余る。それはえらい安くなるだろうと。ですから今土地をお持ちの方は早くお売りになった方がよい(笑)。えー、何分くらい質問するんですか(笑)。もう私の方は早く帰る必要はございませんので(笑)、質問のある方は残って頂いてゆっくりと(笑)。
それから、《カミオカンデ》、《スーパーカミオカンデ》という実験場がありまして、ここはうまいことだまされて連れ込まれたこともあるわけですが、最後にはお陰でニュートリノが見つかったというんで文部省もお金を相当出してくれました。私共全部で1万2千本ほどつくったんですが、このひとつひとつが口径50センチの光電子増倍管でございます。これを1万2千本、高さ40メートル直径40メートルの茶筒みたいの中に、地下1000メートルの中につくったというのがこれです。ちょうどこの完成式というのがございまして水を入れる直前に私共招待された。もらったのは紙ぺら1枚でございまして、お金はついていなかったんです。まあそれでもこれにはニュートリノに目方があるとかないとかいう話がありましてですね、宇宙天文という話が非常に大きく出てまいりました。ニュートリノに目方があったら宇宙は縮んでるんだっていう話だっていうのです。その先生に聞いたんだけど縮むということがどういうことにどういう影響があるんだったら、あんまりないんだって(笑)。ただそういうものが正しいことは一体何であるかっていうようなことを我々の毎日の生き様の中に反映されていないということが、日本人としても大変残念であるという気がするわけです。もう一つ、これも最近ニュースになりましたけどハワイのマウナケアの山のてっぺんに天文台、あの、可視赤外反射望遠鏡、作りまして、これはようやく一発目の絵が出た。で私共の方は本当はここの下のデテクターですけど、日本で最初にやる時にはやっぱり外国の有名な奴の方がいいっていうんで、我々の製品はここの空気の擾乱を検出することを担当しています、要するに非常にきれいに見えた、ハッブル望遠鏡よりはいいのが見えた、という話は何故かというと、これ直径が大きいですから、条件が同じならこっちがいいに決まってる。何で地上じゃ駄目なんだというと、空気が擾乱して絵がゆらゆらになって歪んでしまうというのが問題だという。でそれを補正すればいいじゃないかというんで、私共は、アメリカの会社と人工衛星の回り始めの時に、アメリカの政府が何とかして飛んでる衛星の上をちゃんと見て敵か味方かみたいっていうので、空気の擾乱というようなことをアイテックという会社と一緒になってそれを作ったんですが、それの先っぽの話がここへまいりまして私共はそこのところのカメラを作りました。何か鏡面の検査なんてあるのですが、あれ何だかよく分からないけど、2万メートルも上がればそこから外はあんまり擾乱なんかないわけですから、そこから下のところを補正する様なことをやるときれいなのが写る。ですから何も衛星にのっけることはない。地上でやるならば別になんぼでっかいのがあったっていいし、それから一番いいのはカメラが壊れたら替えればいい。衛星にのっていたらそうはいかんわけです(笑)。
こういうことを研究している先生方に、その地鎮祭に行った時にですね、えらい山の頂上なんですが、なんで先生こんな事するんだと言ったら、宇宙の果てを見たいというんですね。なんか100億光年か150億光年先が宇宙の果てだという。宇宙の果てとはなんだって言うと、この先生方はビックバーンというのがあるのを本当に信用しているんだと。宇宙がビッグバーンから出来たって。あれは僕はお伽話かと思っていたんですが、そのビッグバーンが出来たって話、これがサイエンティックアメリカに載っていたものです。だいぶ前のものですけど、ここでビッグバーンが爆ぜて、ここのところが10のマイナス43秒、ここがマイナス35秒、ここが1秒と。ここまでで今宇宙にある物質の全てが出来ちゃったというのが、書いてある。本当かどうか知りませんけど。で、これから後は、減ることはあっても増えることはない。減るのを計ろうというのがカミオカンデの《プロトンディケー》の主目的なんですね。ニュートリノをつかもうと思ったわけじゃないと。ですからこういうことで、ここが130億年だとすると、地球が出来たのがここら辺だっていいますから、まあ随分まだ若いんだなあということになります。こういうことから考えてみますと、私は、1926年に生まれましたと言ってるわけですけど、私の体の中に入ってる物質というのは、実は100億年か150億年前に出来た物質があちこち回って、本日現在ただ今私の体の中にいるんだという。だから私が死ななくても、毎朝便所でポチャーンと出してる奴もやっぱりそういうものが出てってるわけですから、そういうことを繰り返して、人間の体というのはふた月経つとほとんど前の物質はないということになる。変わらないのは俺だけだという話みたいですけど、この骨と脳細胞ですか。そういうことから考えてみると、我々お互いの体の中にある物質っていうのは、ともかく100億年から150億年昔に出来た物質があちこち回って、たまたま本日私の体の中にいるんだと。それがさっき言ったような60兆個の細胞になってあーだこーだしてるよということでございますから、物質っていうのはライフ、命だとか心だとかっていうものの根源であります。というふうに考えますと、私の体の中にある物質が100億年の間の歴史とか経験というのを何らかの形で引きずってるに違いない。従ってここに椅子があるんだけど、これが私の意識との間でコネクションがないというのが大変残念だ。だから菩提樹の下で深沈として考えたとかですね、あるいは火事場のくそ力っていうのがあって、あのババァ自分で歩けないくせに、火事になったら着物いっぱい入ったタンス担いで出てきたっていう話がある。そういうのが何故起きるんだというのはやっぱり、その辺と違いますかなあと思うんです。ですから、さっき創世記で誰かが宇宙の創造の時、光がものの糊だという話をしたと。あれを言った人っていうのはやっぱり、ビッグバーンからのものを背負ってるとすると、ビッグバーンの時の情報を少なくとも持ってるんじゃないか。ひょっとすればビッグバーンの前の、ビッグバーンをやった様子のメッセージも背負ってるかもしれない。これは今のところ神様だという話になるのかな。だから我々自身が全身全霊の努力をした時にどこまで出来るかという話は、おそらくナポレオンも我が辞書に不可能の字はないと言ったというようなことがですね、ひょっとするとあるのと違うかなあ。そういうことを目指したサイエンスというものを作っていくのがこれからの道と違いますかというのが、私の持論でございます。あと光通信その他ありますけど、質問の時間がなくなって怒られてもなんでございますので、最後の2、3枚に移らせて頂きます。
いろんな方がお見えでございますからあれだと思うんですが、理工科系の話からいきますと、我々のこういう分野っていうのはこんなところにたくさんございます。ただ問題なのは通信をして一体何になるかと。何のために通信するんだというようなこと考えますとですね、これは必ずしも、理工科系の話ばかりではない。日本では、外国の真似をすることに一生懸命になったために理系、文系と分けていろいろ輸入するのが便利と言うことで分けて持ってきたわけで、両方一緒になってという話っていうのは誠に少ない。だから情報なんて話になっても、いわゆる情報の工学という話ですとこれ外国の真似しかないと。情報の根源は一体なんだというのは、本来これはいわゆる文系のような哲学的な思想をちゃんと持たないと駄目なのに。ほとんどのところでそういうことが言えると思うんですね。そういうことが非常に大きな問題だと同時に、新しい光技術と新しいビジネスということをどう考えるか、これは、お渡しした中に入っていると思うんですが。
光技術とニュービジネス
人類には未知、不能のことが無限にある。
新しいサイエンス → 新しい科学 → 新しい技術
↑ ↓
新しい価値観 新しい応用
↑ ↓
新しい生き方 ← 新しい産業 ← 新しい市場
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テーゼとしては人類には未知未踏、不能のことが無限にある。不能というとインポみたいですから、これを話す度に不能の語を変えよう変えようと思うんですが、まだ変えてないんです。これどういうことかって言いますと、サイエンスがあって科学が出てくると。科学から技術が出てきて、応用が出来て市場が出来て新しい産業が出来る。ここで普通終わってこれで新しい産業が出来て何が嬉しいんだって言ったら、お金儲けが出来るよというところで今までは完結していた。そしてそのお金をどう分けるか。実はそれじゃあ駄目と違うかねといいたいのです。新しい産業というのは何が値打ちがあるかって言うと、新しい生き様を人間に与えることが出来ること。今までの生き方じゃないよ。こういうふうにもっと生きるべきなんだっていうふうなことを与えることが出来なければいけない。そうすることによって新しい価値観が出来るであろうと思う。新しい価値観が出来ると新しいサイエンス、本当の本当というのは何だということが更に奥深く見えてくる。そうなりますとそこからまた新しい科学が出てってと言うことで、また一回り更に上の回るサイクルが始まる。このサイクルをずーっと無限に続けることが出来るような体制をとれば、今のようなバブルとか新しいことやらんにゃいかんぞっていう話はなくなる。そのためには今までのような話だけではいかんのではないかと思うんです。
で、世界人類がこうあるべきだっていう話をすると怒られますから、私共の会社としては一体それをどう考えるかということをちょっと申し上げます。目標としては一人一人の人間に対しては真の健康を一生保持してほしい、保持させる。真の健康とは何であるかというと、これはWHOの健康憲章に書いてあるもので、私一番好きなんですが、単に肉体的、精神的に申し分ないだけではなくて、社会的に申し分のない存在であることというのが真の健康だという。社会的に申し分のないっていうのは何だというのはまた難しいんですが、多分己が社会的な、社会の中に存在価値があるということを自他共に認め得るということじゃないかというふうに思ってます。社会に対しては社会全体の評価を正しく把握した、その時の状態で最良の活動目標を立てるというか、あるいはこれがうまく出来れば、変な人が出てきて政治を曲げちゃうという、税金をみんな新潟に持ってちゃったなんていうことはなくなるだろうと(笑)。いかにして、みんなのためにいいかってことがちゃんと出来るような方法はないか。そして世界に対しては、世界秩序を維持するために戦力武力、殺すぞという恐怖をもとにした秩序を維持するというのは、これはじきに駄目になってしまう。おそらく今の静岡大学の理学部の学生さんは卒業される頃、まあ今の卒業生じゃあ無理かもしれないけど、ちょっと先になれば原子爆弾ぐらいは自分のうちの物置で作ってみせると。そうなりますと今のテロというのはトラックへ火薬積んでビルの中に飛び込みますから、せいぜいアメリカ人12人殺したといって大騒ぎしますけど、今度はそんなものが出来た日にはエンパイアステートビルディングの上へ原爆つって、てめえ言うこと聞かなきゃこれ爆ざすぞと。日本はそんなのが3つも置かれれば、日本全体飛んでっちゃう。あるいはもっと酷いことになると地球を爆ざすぜという話になります。したがって武力でもって、恐怖でもって、秩序を維持するという話はもう出来ゃせん。じきに駄目になっちゃう。だからそれをもっと他のもので構築する手段はないのか。これは単に理工学の問題では絶対ないと思います。
これらが大変大事な事じゃないかということで、少なくとも光技術の我々の方から何かやれることは、今までは一一対応というお話を盛んに先生方に習った。原因と結果は一対一であると。その関係を解きほぐすのはこれを科学技術というという話で、技術屋はそこをしっかりやればいいという話だったが、今は一対一でもっては片づかない話がいっぱいあって、それをなんというかと言うと複雑性だとか、あるいはカオスといって西欧のサイエンスではこれは手に負えんものだよという。
その次のもう一つの問題というのはさっき申し上げましたから2度と申し上げませんけれども、連続的に変化をし続ける動的熱力学、動的エントロピーとも言うそうですけど、そういうものです。こういうことが一体何で出来るか、日本からあるいは東洋から出来そうだと想いますが、仏教哲学的なサイエンスというものが非常に大事じゃないかと思う。仏教哲学的というのは、何のことか私もよく分からんのですが、具体的な話として今私が個人的に何とか分かろうと思って夜な夜な読んでますのが、般若心経でして、あの中に「空即色 色即是空」というのがある。「空」っていうのは要するに空っぽではない。まあ私の見るところ坊さんの書いたのを読んでも何言ってるかよく分からんのですが、私らの分野から考えるとどうも「空」って言うのは全部だと。全部っていうことはないに等しいっていうことだろうと思うんですね。だから、それがある形を、「色」っていうのは形だと。形は全部によって作られると思うんです。
たださっき、さっきというか、細胞間通信のところで申し上げるの忘れたのですが、細胞間通信ということをよく考えてみますと、それは分子間通信ということになる。分子間通信ということを考えると、通信というのは、同じものが全く等しい、3本棒のイコールであるっていうものの間では通信はない。違うから通信があるんだという話でございまして、そういうふうなことから言いますと、分子と分子が通信をしてるって言うからには、例えば私の体の中の7割は水だという。ですから私の喋る話の7割は水が喋ってるんですよって言うと、大抵皆さんエエエーっというわけです。というのは水っていうのをみんな同じだと思っているわけです。ところが水っていうのも実はいろいろありましてということになると、それは水と水とが通信をして情報をおこすということはあり得るということになる。その分子間通信ということは非常に大事になってきます。それは人間の体の中の分子間通信だけじゃなくなってくる。外にいっぱい分子がある。先ほど申し上げましたように、私が話をしてるっていうのは私が1人で話をしているようにご覧になってますけど、私から見ると眠そうな顔をしている方もあるし、目をらんらんとしている方もあるし、あの子はちょっと美人だなという人もいるという、あんまりいないか(笑)。まあそういうようなことよりも皆さんの方が、「うん、それはおかしいぞ。」とか「うん、そうだね。」というふうなことを知らず知らずに顔に表す、あるいは皆さんの体の分子がそういう情報を私に与えて頂いてる。それによって私の分子がまたそれに反応して、それで私の体の細胞が私の脳細胞に「おまえ、こう言えよ。」と、あの人達はこう言ってんだぜということを恐らくやってるんだろうと思うんです。それでないとこれテレビに写して持ってくればいいんですよ。何も汽車に乗って雪の降る日に来ることない(笑)。だけど何でテレビが駄目なんだっていうのは、私と皆様方との間の分子間通信がここで行われてるんです。だからあの女たらしって奴はじーっと顔を見ているだけでコロンと落とさせちゃうんですね。私にはまだその能力がないんですけど(笑)。まあ、あんまり妙なことを言ってると、2度と来るなって言われちゃう(笑)。
そこでこれが今日私がこちらへお伺いした大きな理由なんでございますが、具体的に言いますと科学技術庁でその地域の科学振興ということを考えて下さいよという。で静岡県も何か頑張ってやるかと、私共の会社としては、まあ光だと。先ほどの科学技術庁の何とかっていう委員会出てこいって言われまして、2つありまして1つはこういうことをやる、委員が4、5人。10人もいません。もうひとつは妙な委員会でございましてロケット上げたらどんどん落ちてしまう。何故落ちるんかっていうんで、そんなもの俺分かるわけないじゃないかって言うんですけど、妙なもの、一品料理をつくって誤魔化すのがお前のところはうまいっていうわけです、それで(笑)。まあこれが、当地を核として人類未知未踏の光技術を研究開発し、その成果を広く国内外に発信し、もって人類の発展に寄与する。これが先ほどの戦争をやめるっていうか、あるいは世界秩序という話を全部含んでるかもしれませんけど。これがテレビジョン技術っていうのが浜松にあって、それをもとにこううんぬんと。要するに今まで申し上げたように、知らんことはいっぱいあります。知らんことがいっぱいあるのだから未知未踏のことをひとつずつ皆さんと一緒に捕まえていったらどうですか。それに是非、一緒に加担して頂きたいといいたいのです。大学の組織で教授会で議論する時には、未知未踏という議論は出てこないと思うんですね、多分。ですからそこのところはやっぱり我々が外からガタガタ揺するしかしょうがないんじゃないかと思うんです(笑)。そういう研究項目っていうのは、まあ今まで申し上げましたのがほとんどですけど、レーザーフォトンファクトリーと申しますのは、スプリングエイトというのが播磨にございます。それからあの、筑波へ行きますとフォトンファクトリーというのがございます。あれとまあ同じか、もうちょっといいものを作りたいわけですが、私共のはレーザーでやれないかと考えているのです。そうするとこんなバカ高い金はかからない。それと同時に非常に特色のある光源が出来る。あわよくば、あのフェムトでもアタでも作っちゃどうだとなる。そういうものをひとつ、我々の手のもとに置くと、それをもとにした未踏領域の研究が出来るんじゃないかと思うんです。それをいろいろな研究の活動のひとつのシンボリックなものにしたい、まあ同時にこれ作らなければいかんわけですが、それと次に超高速測光っていうのは今のフェムトだとかアタだとかというのをちゃんと計れるということと、さっき言ったダイナミクスみたいなことをちゃんと作っていこうということになります。それからこの次はわけが分からないのですけど、光との間の干渉といいますか、あるいはあのフーリエだとかあるいはホログラムだとかいうふうな話がありまして、あれも今の教科書に書いてある話は非常に幼稚なのです。もうちょっと進んだ形でのああいうものを作り上げていく、あるいは理論的に作り上げることもそうですけれども、我々としては是非実証したようなものを作り上げていきたいと考えています。
その次が予想力のあるシミュレーションです。シミュレーションて私もあんなものやるのは馬鹿だと、知ってることをただ単にコンピューターに入れただけで絵にして何が嬉しいんだって言うんですけど、この頃のシミュレーションは違うぞって怒られまして、あの、巨大科学で何かやる時にいちいち、例えばレーザー核融合の実験を毎度やってたら金がかかって仕方がない。だからシミュレーションをちゃんとやっていく為に必要なことは何だということをよく考えて、今度の実験一回やったらそのシミュレーションの分からないところを、また入れることが出来るということで、今は大抵の実験がシミュレーションで出来ちゃうんだという。そういうのの中で分からないところ、あるいは実際やってここは違うというふうなところは貯めておいて、じゃあこの次実験する時にはこれをやってみるかというふうなこともやる。だからシミュレーションというのは巨大科学になればなるほど必要欠くべざることになってるということで、さっきの日本経済をどうする、この町を田中角栄の論じゃなくて世界の人が、あるいは日本中の人が、あるいは静岡県の県民が最もいいようにするためにはどうするんだって言うこと、それがシミュレーションなんですね。ただその中の群対群の原因と結果というようなものがちゃんと入ってこないと駄目だっていうことは、恐らく言えると思うんですけれども。これが基本なのか結果なのか、シードとニードってのは、常に、回ってるような気が致しますね。そういうようなシミュレーションというのか、あるいは予想が出来るような能力がないとシミュレーションとは言いませんね。その下は今申し上げた、大出力レーザーの開発と応用というようなことをやったら、いろんな事が出来るんと違いますかということです。
更に、今のを基本に考えますと、応用の方としては生体の機能の計測、先ほどPETはお話ししましたけれど、PET以外に普通の可視赤外光でもって人間の体のCTをやろうということで、いいところまで出来ておりまして、今あのハワイのマウイ島のスーパーコンピューターを使ってアルゴリズムを計算してます。出来てきたらそれを実際使わなければいかんということになるわけですけど、これはまあ多分医学部か、あるいはどこか知りませんけど、利用されるでしょう。私共の方のスポーツホトニクスなんてところでこれ持ってきますと、ジュビロ磐田が完全に勝てるようにしてみせるんですが(笑)。ジュビロ磐田は金がなくて、270万しかない、払えないっていってるんですが、まあしょうがねえなあと思うんですが。
次の農業の産業化って話。これ実は農林省に行きまして考えてみたんですけど、なんで農林省というのは威張ってるんだと。農林水産省ですかね。衣食住の一つということで重要ということかと思いましたが、だったら繊維省というのは何故ないのかと。繊維がなかってみろ、みんな裸で困っちゃうぞと言ったのです。そうしたら、それはもう既に産業になっていると気付いたわけです。産業というのはいいものを安く作れる。そういうことは誰でも出来るから競争することによってそこでやらせられる。農業というのは水産も林業もそうかもしれませんけど自然相手だと。特に農業はおてんとさま相手です。だから台風が来ちゃって駄目だとか、あるいは日照りになっちゃったよとか何とかいうと米が出来ない。大騒ぎして輸入しなければいかんて言うんで輸入して頼むとなる。それじゃあ今年だけじゃ駄目だぞ、今後ずっと輸入しろっていうんで約束させられて、今余った余ったって言ってるわけですけど、値段から見たらそれは全然向こうの方が安いわけですね。そういうのを植物工場でやりますといくらでもできる。コストは電気さえ安ければもう輸入品よりも安くできるという。3円でやりますとトン5万6千円ぐらいでできるんですかね、計算してみますと。ですから、随分安くできる勘定になりまして輸入する米よりも安い。
まあそういうことから新しい産業を興す、ここらへんのあとのことがどうなっちゃうかっていうのは、これは理系の人間じゃあ、どうにもならんですね。経済学部というか、経済学もへなちょこ経済じゃあ駄目だぞということで、あの、学長さん、経済ですか(笑)。大変面白いテーマだろうと思うんですよ。そういうところからフィードバックして、だからこうだとやれるのが大学のいいところだと思うんです。単科大学じゃあそれは出来ないということでございます。光通信、これも例えば、情報ネットワークの構築って簡単に言いますけど、そもそもお前、人間とは何であるかというようなことがちゃんと分からないとこの話は出てこない。健康だと言ってもですね、サクセスフルエイジングといって元気に年取らないと。その60歳だか65歳からの年金支給層が、いや私も実は貰ってますからあんまり悪いこと言えないんですけど、いらないっつってもあれ来るんですね、貰ってもらわな困るって。それでいて税金取りやがるからインチキじゃないかって(笑)。その人達がちゃんと死ぬまで元気よく社会に尽くして生きていけるような年の取り方はないかと考える。もしこれが出来れば、そんなに大騒ぎすることはない。それから医療費、25兆円使ってると。もう今年は30兆円ですけど、去年か。30兆円使ってるとその中の半分はね、香典代わりですよ、あれは。うちの前社長は去年死んだんですが、死ぬ前の1年はもう助かりっこないと言われたんですけど、助かりっこない病人をあちこち検査すれば、そこら中悪いところばかり出てくるんですよ。悪いところだらけを保険で許可されるだけの最高の治療をしてくれるわけです。それで我が社の健康保険組合に請求が来て、死ぬまでの1年間に7200万使ってってくれた。そんなの半分現金でくれれば、本人喜んだのになあと思うんですけど(笑)、そういう話がいっぱいございます。それと公害問題。これはさっき申し上げました。それからエネルギー、これもさっき申し上げました。そういうことから目的としてこういうことが出来ないかというようなことで、是非これに加担をして頂きたい。
最初にご紹介頂きましたように、私は小学校から実は静岡大学に縁があったわけでございまして、私の出来が悪けりゃ全部静岡大学の責任だっていう(笑)、良ければまた静岡大学の責任だっていうのもあるんですが。まあそれと同時にその他に浜松医大だとか、それから、薬学部となるとどこにもありませんから、県立大学にお願いする。あるいは文化系は県立大学の方がいいのいるよっていう話もあって、そこらへんはよく分かりませんけれどもどうなんですか(笑)。他にも外国の、前からつき合っておりますがロンドン大学とか、ロックフェラーとか、それからMITとはその学長さんともよくお話してます。ロンドン大学ではもうこの話、ちょっとしてきました。最初私が何言ってるのか分からないと言ってましたけど、そのうちに分かったっていう話で、協力して頂けるという話です。
ご静聴有り難うございました。是非、特に若い方に。私共が大学の組織の中にこういうのを持ち込んだら、不羈奔放に動いて欲しい。私共が何か組織を作って、外部からこういうことを一緒にやりませんかといえば、学長の許可を得てそういうところへいってもお前、くびにはせんよと。一緒になってやって頂きたい。お金がいるようならばしかるべく地元の代議士か、前のなんと言いましたっけ、科学技術庁の長官はこういう話大好きですから、まあそういうふうなこともやりながら、是非ですね、この郷土浜松のために、あるいは静岡県のために、新しく発信して世界に持っていくということに、先生方のご協力を頂きたい。そういうことで、もしできましたら「俺、それにかかりたい。」という方を、学長が元気の良さそうな方を数人選んで頂きまして、その人が核になりながらすすめる。具体的な話は、個々の話がありますからそれとして……。大勢でガタガタやってもしょうがないわけですが、ただひとつの問題で、農業の問題ひとつ取り出しましても、その中には経済のオーソリティーがいてちゃんと話してくれないと方向を誤る。ともかく世界にやったことがないというのは、自分で見つけにゃいかんのです。だから暗夜の真っ暗なところへ、地図を何もないところへ電灯もなけりゃあ何にもなくて放り出されてグッドラックって言われたら、どうやって歩いたらいいか(笑)。そういうふうなことをやるのが、その未知未踏の分野を開くということなんで、それを外国視察に行ったらありました、文献読んだらあるでしょうとか、あるいは新しい学生をもらって、何か新しいことお前やってみろって言うと何をやるかっていったら、あの、端末へ行ってパタパタ叩いて文献サーチやって、でなんか出てくるとそれを持って大威張りで「社長、ありました。」って。ないと「社長、それは出来ません。何にも出てきませんから。」と。お前何だ、端末の叩き屋かと(笑)。お前には何にもないのかということになります。有り難うございました。」
〔質疑〕
センター長
「どうも晝馬先生、長時間本当に有り難うございました。すばらしい話術で示唆に富むいろいろなご提言を頂いたと思います。いくつか質問を頂きたいんですが、どなたか。若い学生さん、なんなりお答え頂けるんじゃないかと思います。先ほど、大抵質問は出ないというふうなお話でしたが、是非静岡大学からひとつふたつ、質問を出して頂きたいと、主催者の1人として思うんですが。はい、どうぞ。」
会場
「あの、変な質問なんですが、最後に若い人というふうにおっしゃってましたが、精神年齢が若いというか、その若さの定義といいますか、どれくらいやる気があるのが若い人といわれるのか…。」
晝馬先生
「こういう仕事をちゃんと仕上げるには、少なくとも50年はかかると思うんですね。あるとこまではいけたとして。大体この方向へ進むとあの男の言ったことはもうできる。従ってあの男の言ったことの話はこれで済んだというのはまあ、50年、早くいければ、30年かと。そのくらい生きていられるという人が若い(笑)。」
センター長
「宜しいですか。他にどなたか。」
会場
「最近マスコミなんかで若い者はとかとよく言われるんですけど、今の大学生に何か望まれるというか、産業界が望むような大学生像はどういうのかありましたら、お伺いしたいんですけれども。」
晝馬先生
「いや、だから、こんな事が出来るのは私だけですよ、世界中で。これを知ってるのは私だけですよというものをどうやって掴むか、その悪戦苦闘していくことの出来るようなものを持っている人が欲しい。ですから、学校の成績が良かったというような、学校の先生に聞けば分かることなら何もあんたに頼まなくても(笑)、もとに聞く方がちゃんと教えてくれる。まあ、その話なら社長、あの先生のとこに行けば教えてくれるよっていうのが値打ちあるっていうこともありますけど、そんなのにあんまり高い給料は払えない。だからこれから日本がこの地球の中でちゃんと生きていって、日本人が一流の人類だよと、そういうことも発信出来る人ですね。少なくとも光に関しては、私共もあるものを作って、そこそこのところに今来ているけれども、話が大事なところへいくとどうも弱い。私のインチキ話で誤魔化しているぐらいのもんですから、今度は本当にこれを実行しなきゃいかんなっていう話ですから、そういう意味では、そういうものを自分はどう思ってんだということだと思いますけどね。まあそれをどうやってやるかっていうのを私が言えるくらいなら苦労はない。いいですか。」
センター長
「他にどなたか、ございますか。もうひとつくらい、あ、どうぞ。」
晝馬先生
「あんまり若くないなあ(笑)。」
会場
「・・実は1985年に日本でですね、陽子と反陽子の衝突の国際会議があって、その時に浜松ホトニクスの社員の方が2、3人来ておられて、そこで少し話をしたんです。その時にルビアっていうダブルボゾンを発見した人が来てまして、1983年に、発見された人。その時に陰口がちょっと前にありましてね、実験屋さんは失敗すると馬鹿にされるからっていうんで、慎重にしてデータあんまり出さない。ところがルビアは非常に大胆で、1回の実験でマルにしちゃうぐらいにですね、と言われるぐらいにだいぶ失敗をしたと。だけどとうとう彼は、ああいう《ダ・・・・》を見つけたと。非常に大したものだと皆さん評価してました。それで僕自身も、実験屋さんがなかなかデータを出さないって言うんで、もうちょっとデータを出してもいいんじゃないかなという感じがしました。それがまあひとつ。ふたつめにですね、脳磁計っていう今さっき脳の話が出ました。僕も今附属養護学校に関係しているんです。兼任でやってるんですが、脳の問題っていうのは非常に難しい問題がいろいろあって、例えば自閉症なんかでも脳の障害だと分かっていても、まだそこのどこの部位が障害があるかというのが分からない。それからいろんな脳の障害を持った子供さん達がいるわけですね。そういったところに対して、もうちょっと研究って言うんですかね、そういうのがあっていいんじゃないかなあって感じはするんです。その辺は浜松ホトニクスとしてはどんなことをやっておられるんでしょうか。」
晝馬先生
「今私共がある立場っていうのは、道具の供給なんですね。だからポジトロンカメラはこしらえれますよと。だけどどうやって使っていいかまだ分からんのだというんで、ヘンリワグナーが一緒にやろうって言って、まあいろいろ助けてもらって今うちの中にあるわけです。ですから、おっしゃることは確かにそうでございまして、是非おやり頂きたいと思うんですけど、私共がそれをやろうとしますと相当今度は幅の広い知識と協力関係がないとできない。ともかくそのライブの文献持ってきて真似するかとなる。だから脳磁の機械を作るのにこれと同じものを作れとおっしゃるならこれは出来るわけですけど、その脳磁の機械じゃあ出来ないことを何としてやるんだというふうなこと。じゃあ磁界って一体なんだというんで、今実は光と磁界っていうような話が新しく出てまいりました。そういったもので何か出来ないかっていうのは、だから道具を供給することは出来ると思うんです。それ使ってどうするんだっていう話は是非その大学の先生と一緒に研究したいですね。ただ私共と一緒になった時に、俺に作らせれば、もっといいフォトマルチプライヤーを作るよって言われるとこっちは困っちゃうわけですから、まあそっちは私共に作らせてもらってですね、それをもって何すんだというふうなことをですね、ひとつお考え願いたい。ですからそこまで全部我々が知ってるわけじゃあございませんので、私共は高柳健次郎の後をひいてということでございますから、光とエレキとの間の情報の交換みたいな事が主体でございます。そこでちょっと、物質と光との相互作用なんてこといってるわけですが、それはあのお客さんにものを言うときに、何をこの人は言ってるんだということを理解してもらうためにですね、そういう目から見てみるとああそうかと、この人はこういうことを言ってるのかということが多少理解しやすくするということで言ってるわけでございまして、私共がそこまで、全部出来るなんていうのはございません。そういうことが出来る人はいませんかということですね。だから自閉症の研究やりたいというんで、俺が世界で誰も知らんことを知ってるぞとか、出来るぞっていうお話なら是非それと我々とが何かくっつく手はないかというわけです。まあそれが1人2人でなくて何人かっていうのもありますけど、大勢寄って相談すると大体ろくでもない話になっちゃうんですね、通常。いいですか。
最初の方の、あのルビアは、実はMITとCERN(サーン)の間を1週間おきだかに行ったり来たりしてた頃に会いまして、お前さん時差どうやって誤魔化してるんだっていう話をした覚えがありますけど、その時分にあの人から連絡がありましてね、妙ちきりんな光電管のガスを入れたフォトマルよりもっといいのがこれで出来上がるぞと言ってきた。まあよくもこんな事を言ったもんだなあ、理学の偉い人がって思うような変な話持って来ましてね、それで何度も、来いといって口説かれたんですが断り続けて、助かったというようなことがありました(笑)。ノーベル賞をもらった時に、お祝いの電報を打ったら、ちゃんと手書きの礼状が来ました。もう覚えてないかもしれませんが。」
センター長
「他に何かございますか。宜しいですか。今晝馬先生からご提言があったようにとにかく、文系・理系の垣根を乗り越えたグローバルなネットワークで共同研究をやろうじゃないかというご提案だったと思います。幸い私共静岡大学は総合大学でございますので、ひとつ晝馬先生と共同して何か世界に冠たる仕事をやってみたいなというのは私1人ではないんじゃないかと思います。今後の発展を期待したいと思います。先生今日は長時間どうも有り難うございました。(拍手)」
(講演会記録テープから。OHPは省略)
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